ヤクザに弟子入りしました(坂口孝則)

以前、ヤクザに弟子入りしました。もちろん、これは比喩です。恐ろしい上司の部下になりました、の意味です。激しい指導、ミスを許さぬ雰囲気、汚い口調……。いまではパワハラといわれるでしょうけれど、たしかに当時は厳しくすることが部下を一人前にする方法でした。それに、強く指導されぬまま加齢するよりもずっと良いでしょう。

ところで、そのヤクザ(失礼!)がいっていたことでずっと心に残っているものがあります。それは「1位になれ、2位は負けだ」です。これは、殺された元アメリカ大統領のケネディ一家の家訓だそうです。かつて「2位じゃダメなんですかっ!」が流行語になりました。だから、「1位になれ、2位は負けだ」とは、相当マッチョな意見です。反発を抱くひとも多いでしょう。なにより私がかなりの違和感をいだきました。「1位になれって、古臭いなあ」とかね。あるいは「何位でも人間は価値が有るだろう」とかね。

でも、ヤクザは2位を許しません。そのひとも、相当な範囲でたしかに組織内1位のひとでした。いや会社内1位を多く有すひとでした。原価計算とか英語とか、何より仕事のスピードは随一のものでした。しかも、勉強を重ね、短期間で中小企業診断士資格も取得していました。口癖が「日本で2番目に高い山を知っているか?」「世界で2番目に高い山を知っているか?」でした。「いや、それは知りません……」というと、「ほら、それだけ1位と2位とでは絶望的な差がある」といって聞きません。

ヤクザ、いや彼からすれば、2位は敗者なのです。

ちなみに、北岳とケーツーが、日本と世界で2番目に高い山です。まあ、たしかに知りませんね。私の尊敬する故・寺山修司は、「一点豪華主義による逆襲」と表現しました。つまり、何か一つに特化することで、他から抜きん出る戦略でした。たとえば、電球のワット数と、レーザーのワット数では、レーザーのほうがはるかに小さいのです。でも、レーザーは目に投射されたら、目がダメになります。それはレーザーのほうが一点に集中しているからです。焦点が狭いほど、その力は大きくなります。力の総量は弱くとも、焦点を絞ることで勝者になります。

ところで私は処女作発表時に、調達・購買関連だったら「5冊以上の書籍を出したらナンバーワン」とわかりました。だから5冊を出せば、1位でした。私は現在25冊の書籍を出しています。私の後世代が私を抜こうとしましたら、26冊を出さねばなりませ。けっこう難しいはずです。となると、私がずっと1位になるはずです。そういう戦略だったのですから狙い通りではあります。でも、どんな世界でも1位にならねばならないことの事例としてご紹介しました。

もちろん、どの範囲で1位なのか、という疑問はありえます。社内なのか課内なのか、部内なのか。でも、それはさほど気にせず、「自分が把握する範囲において1位」ていどで良いのではないでしょうか。少なくともその範囲で1位になることが、あなたを目立たさせるきっかけになると思うのです。

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい