一人だけ仕事がうまくいく方法(坂口孝則)
以前、ある調達・購買部長さんとお話ししたときのことです。「良いサプライヤの社長と、悪いサプライヤ社長の特徴は何か」。面白い答えは、「前者は、会社の問題点を教えてくれる」というのです。「しかし、後者は、常に政治の話をする」と。つまり、「〇〇政権が悪いとか、✖✖政権はもっと悪かった」とかつねに環境のせいにするというのです。環境のせいにする社長さんで業績絶好調のところはありません(すくなくとも私は知りません)。なるほどな、と私は思いました。
常に「自責意識=自分にのみ責任があるんだという意識」を持たねばなりません。不景気の際には、不景気自体がチャンスにもなるはずなのです。すこし昔話なのですが、私はあるとき一つ仕事がキャンセルされたときがありました。時間がありましたので、それをきっかけに教材を作成することにしました。環境のせいにするのは簡単です。でも、せいにしたって一円にもならないのですから、なんとか逆境を使うことを考えました。
こういう話をすると「すべてを意識だけでは変えられません」と反論されます。はい、そのとおりです。「たとえば、次の瞬間から赤字会社を黒字会社に転換することはできませんよね」と。はい、そりゃそのとおりです。でも、たとえばやれることはないでしょうか。「まだ自分はやれることがある」と信じないと、何も進みません。
あくまで一例として聞いてください。みなさんバイヤー企業は、サプライヤの決算書を集めたり、サプライヤを格付けしたり、あるいは倒産の可能性を点数化する、与信調査会社と付き合いがあるはずです。これらの会社から点数を低くつけられてしまうと、ビジネス活動に支障がでます。この点数は、操作できないものだと信じられています。しかし、それはほんとうでしょうか。
いや、社長の意識で点数を変化させられるのです。調査員に積極的に話す社長の企業は点数が高く、調査員をないがしろにしている社長の企業は点数が低くなることがわかっています(もし反論があればお寄せください)。しかも、取引先一社一社をまわれば、ほとんどのサプライヤでは顧客のつなぎとめができ、お客が求めている製品や技術などを次期の開発につなげることができています。社長が環境のせいにせずに、自責意識をもっていけば、おなじ業界でおなじようなビジネスをしていても、まるっきり変わるのです。
そして、その見極めこそ、私たち調達・購買関係者が行わねばならない「リアルな評価」ではないでしょうか。そして自責意識をもつことこそが「一人だけ仕事がうまくいく方法」につながるのだと思うのです。私も、そういった自責意識をもつみなさんを、必死で応援したいと思います。