2-(3)-3 調達・購買の社会的意義「書類確認だけではなく」

サプライヤーの情報を確認するときに、バイヤーはどうしても書類だけを見てしまいがちです。工程内の安全や衛生。グリーン調達や人権問題への対応。昨今求められる情報が多いためか、どうしても字面だけを追ってしまうのです。

しかし、それでは資料のための資料になってしまいがちです。安心するためだけの資料とでも言いましょうか。バイヤーが多忙なせいか、これらの報告資料が単なるルールのためだけに使われている気がしてなりません。

例えば、「工場内の清掃さ」を確認するためにどうしますか。工場内が清潔であるべき理由は、完成品ができる限りきれいであるべきだからです。それに触れる工場関係者やお客にできる限りの高い品質の製品を提供すべきだからです。工員の健康を考えるべきだからです。

もしそうであれば、床が清掃されているところだけを見て、品質監査で満点をつけるべきでしょうか。壁がきれいに磨かれていることだけを見て、満点にするべきでしょうか。工場の床や壁よりも、製品を生産している機器類の上部がきれいであるべきだ、と思いつく発想力、感度はあるでしょうか。機器類の上部が汚れていればホコリが舞い、製品に付着するだろう、ということを気づくことができるでしょうか。そういう感度があれば、普通には見えない機器類の上部を見ようとするでしょう。梯子を使って、あるいは2階から。機器類の上部の汚れを発見すれば、満点どころかバツをつけるでしょう。

こういうことは書類では確認できない、加えて誰も教えてくれないことです。だから、バイヤーはそもそもなぜこのようなチェックをするべきなのだろうか、という質問を自己に投げかけねばなりません。

感度を得るには、おそらく目的意識が必要です。目的意識があるバイヤーならば、きっと日々の業務の中で次々に発見があります。そして、その小さな小さな発見の積み重ねの中からしか、感度を磨いていくことなどできないはずです。

青臭い言葉を述べるのは趣味ではありません。が、「グリーン調達」「安全衛生」「個人情報保護」などというお題目を要求する前に、それらの真の目的と自己の業務を通じて社会に貢献できることを原点に立ち返って自問するべきだと私は思います。

調達という行為を通じて社会を改善する。こういうとなんだか社会正義を振りかざす夢想人のようです。ただ、夢想人と言われても、それでもなお私は各バイヤーが社会貢献の意志を持って業務に取り組むことを強く勧めます。

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