奥さんと恋人から成功させてもらう方法(坂口孝則)

以前、別の機会に似たお二人とお会いしました。一人は芸能人、もう一人は失敗した起業家です。なぜ似ているのでしょうか。その芸能人のかたと番組収録の休み時間に話しました。すると、その方はかなり成功しているのですが、奥さんが口癖のように「あなたは面白いから絶対に大丈夫」と、まったく売れていなかったころからいっていたようなんです。何か確信に近いくちぶりだったようで、「いま思うと、その妻の声が支えになったんでしょうね」とおっしゃいます。

そして失敗した起業家です。彼は、広い意味で、調達・購買関係者です。かなり勇んで独立なさいましたが、すぐに失敗(正確には2年後に仕事がなくなりました)。それで慰めていたのですが、おなじく奥さんが口癖のように「あなたは(独立しても)難しいんじゃないの?」とおっしゃっていたようなんです。でも本人は大丈夫だ、ということで独立した。でも、失敗した、と。

共通点は奥さんの存在です。もちろん、成功したひとは、成功したがゆえに、奥さんの予言が注目される側面もあります。失敗したひとは、失敗したゆえに、奥さんの予言がおなじく強調されるかもしれません。奥さんの予言にかかわらず、成功するひとは成功するだろうし、失敗するひとは失敗するだろう、とクールにいうこともできます。

もちろん、予言のあと付け的な要素は排除できません。しかし、それでもなお、私はこの二者から奇妙な学びをえます。それは、端的にいうと、「自分以外のひとは、自分がどうなるか知っている」ということです。

自分のことをもっともわからないのが自分自身です。そして、自分のことをもっとも理解しているのは、身近な第三者です。ここ10年ほど、サラリーマンや、独立志願者やすでに独立したひとと出会ってきました。おそらくみなさんもそうだと思います。彼らは、ほぼ「なんとなくだけれど予想通り」になっています。みなさんも誰かを想像してもらうと、そうではないでしょうか? おそらくそのひとは「なんとなくだけれど予想通り」の人生になっていませんか?

たとえば、独立したひとと話すと、妙なほどのプライドや、他者にたいする嫉妬、ムダな時間の使い方……などが気になるケースがあります。どうも、そのひとが大化けする気がしないのです。「まあ、それなりには生きるだろうけれど、それなりだろうな」と思うと、たしかにそのていどです。逆に「このひとは面白い! 人柄も素晴らしいし、何よりも努力している。真面目だ」と思うと、その本人は謙遜していても、いつか大きな仕事を任されたり、あれよあれよという間に成功しています。

繰り返します。私たちは、自分のことをもっともわかりません。でも、あなたの身近なひとは、直感的ではあるものの、あなたの行き着く先がわかっています。とすれば、その身近なひとに、真摯に耳を傾けることが、自分改善の最善策ではないでしょうか。

ところで、先日、私の祖母が他界しました。口癖のように、「あんたはこうなる。でも気をつけねばならないことは……」と言っていました。私が小学生ころのことです。「あんたはこうなる」の箇所を私は否定しました。しかし、気づいたら祖母のいう通りになっていました。惜しむらくは、「でも気をつけねばならないことは……」の続きを拒絶して聞けなかったことです。その後は病魔に蝕まれまともに話ができなくなりました。いまの私を見ていたら、どんなアドバイスになったのでしょうか。自分のことをもっとも理解しているのは、身近な第三者であることに気づくのが遅れました。

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