日本人の調達部員をバカにされました(坂口孝則)

数年前に、フィリピンを訪問して現地の企業と話をしていたとき、「日本人はNATOだ」といわれました。NATO? 略語を質問すると「ノー・アクション・トーク・オンリー」といいます。思わず失笑してしまいました。だから、あなたも何も決めずに帰るだろう、というわけです。

その後、中国の深センにいったときに、現地企業から苦情を受けました。「この前も、日本企業が工場にやってきたんですね。たくさんのひとがやってきました。二日間にわたって、いろいろな問題点を指摘してくれました。それで、どうなったと思いますか。取引を開始するでもなく、だらだらと引き伸ばすだけです。日本人は何をやりたいんでしょうか」。私はなかなか返す言葉をもっていません。「他国なら、その場で即断即決ですよ」とも。

以前、イスラエルで27年間ベンチャー投資をやっている方とお会いしました。早口の英語で情熱的に語るさまは、スピードこそが現代には重要だと全身で表現しているようでした。「大企業はとにかく決定が遅い。提携先や取引先を紹介しても、なかなか前に進まない。まだ可能性があるのは中小企業だ。決定が早い(速い)だけで、じゅうぶんあ優位性になりうる」と述べていました。

なぜ日本企業は決定が遅いのか。

これはつねに議論されるテーマです。決定できない、と日本人がいうとき、多くの場合「決定にいたる情報が足りない」と理由を述べます。しかし、完全な情報が集まっているのであれば誰だって決断できます。ただ、そんなことはありえません。不確実な状況での意思決定が必要です。

悩む、とは、けっきょく「どちらを選んでもいい」ということですから、それならば早く決断を下したほうが良いはずです。私は自省も込めて、日々、このように意識しています。

「次までに考えときましょうかね、というのをやめる」
「やる、やらない、をその場で決める」
「迷ったら、とりあえずやってみる」
「約束の日を決める際は、もっとも近い日に設定する」

調達する側と、調達される側が対等になって、ビジネスがどんどん流動化しています。その場で決めなかったら、調達できなくなってしまう状況が到来しています。

私は思うのです。これから、調達スキルも必要ですが、もっとも教育すべきは意思決定と決断の技術ではないか、と。

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