【必見】調達部員の不正をつかまえた話(坂口孝則)

これから、大事なことを書きます。

ここ数年、私は調達コンサルティングのなかでも、業務プロセスやサプライヤ評価、組織変革について取り組んできました。コスト管理が重要な現在、適切なコストで、最適なサプライヤから調達するのは重要な課題です。

かつて調達の三権分立が叫ばれた時代がありました。
・仕様を決める部門(設計部門等)
・サプライヤを決める部門(調達部門)
・検収と支払いをする部門(生産、経理部門等)

上記のようにわけて、カラ発注や癒着を防ぐ目的です。これによって多くの不正を防げるようになりました。しかし現代の問題はその先です。

「高すぎる価格で調達担当者が契約している」
逆に
「トップから価格低減指示を受け、異常な安価で調達している」
といったものです。

実際に、現場のコンサルティングで、通常なら1万円のものを2万円で調達していたり、通常なら1万円のものを5千円で調達する代わりに他製品で割高に払っているなど不祥事が見つかるケースが多々あります。

そこで私は三つの防御線が必要だと結論にいたりました。これは調達部門だけではなく、その他部門の不正にも共通する観点です。

・第一の防御線「自部門内」
・第ニの防御線「他部門からの牽制」
・第三の防御線「内部監査部門からの監視」

まずは第一として、自部門での管理です。決定価格や決定サプライヤが妥当であるか、上司が確認したり、担当者が妥当性の証明をしたりして記録することです。これもできていない企業は意外なほど多く、これが第一歩です。

次に、調達部門が決める価格などを、他部門が監視することです。某自動車メーカーでは、設計部門が査定した価格と調達部門の見積書を比較し、どちらが間違いかを徹底的に検証します。1円でも実際の価格が高めにずれていたら、部門長に連絡が届きます。そこまではやれなくても、抜き打ちでもいいので、不定期でもいいので、価格決定者へ監視の目を注ぐことです。

最後は、内部監査部門からの監視です。これは、実際にみなさんの会社にいる監査部でもいいのですが、独立していればどの部門でもかまいません。経営トップに近い部署でもよいでしょう。

そして残る問題は、そもそもトップが「無根拠で、合理性のないコスト低減」を強制する場合です。会社の多くは上意下達を前提としていますので、残念ながら絶対的な解決策はありません。

しかし残るのは内部通報と監査役です。内部通報は、会社によっては通報者の名前等を公開する(あるいは公開はしないものの事実上、判明する)仕組みで、骨抜きを狙っている場合が少なくありません。その場合は、すぐさま会社を辞めましょう。冗談です。ただ、会社の本気度を図る一つの指標です。従業員が200人につき年に一件くらいの通報が普通で、それよりもだいぶ少なければ問題ありです。

また会社では経営陣の暴走を止めるために、監査役が存在します。理屈では、監査役は従業員からの情報を得るとされていますが、多くの会社では一般従業員が監査役に連絡する手段をもっていません。むしろ、名前や顔すら知らないケースが大半ではないでしょうか。

これは大変にいいにくいことですが、「無根拠で、合理性のないコスト」で調達しなければ、事業全体の利益が成立しない場合は、そもそも事業が破綻しています。ただ同時に従業員は、自分が調達している価格が妥当性のあるものだと証明できなければなりません。

牧歌的な時代は終わり、この時代は厳しいともいえます。さらに当たり前の時代ともいえます。

*ところで私は冒頭で同僚の方に転送をお願いしました。新時代における調達部門の役割について、「新型コロナウィルス後のサプライチェーン・調達・購買業務」への緊急提言、という無料レポートを発行しているので、ご紹介いただきたかったためです。

(2020年7月版)「新型コロナウィルス後のサプライチェーン・調達・購買業務」への緊急提言


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