モーツアルトと調達・購買の奇妙な関係(坂口孝則)
グラフを想像してください。左下から右上に、S字を斜めにしたような曲線です。日本のGDPの伸びなどを思い浮かべていただくといいかと思います。
このS字の曲線は、人間界のさまざまなところに出現します。たとえば、歴史上の自動車の普及率とか、あるいはスマートフォンの普及率などです。最初は数%の購入者しかいなかったところ、伸びはじめ、急速に普及し、そして普及率が高くなってきたら横ばいになっていく。
これを経営戦略に活用しようとしたのが、ボストンコンサルティンググループです。彼らは、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントと名付け、「導入期」「成長期」「衰退期」と期間を定義付けました。
しかし、このS字ですが、非常に面白い人間活動にも応用できると考えたひとがいました。セオダー・モーディスというひとで、このひとは、モーツアルトの作曲活動にもズバリあてはまるといいます。つまり作曲を開始し、どんどん曲を作るようになり、やがて曲を作れなくなっていく……。モーツアルトの年齢と作曲数を調べたところ、怖いくらいに合致したようです。
まるでS字カーブは将来を予見するツールになるというわけです。
日本のGDPに話を戻せば、それは日本というビジネスモデルの「衰退期」に突入していると見ることもできます。新たな成長を描こうとすれば、これまでと異なるビジネスモデルを発明せねばならないのです。
このS字カーブは、正規分布のような形でも記述できます。もちろん、すべてがこのようにぴったりとあてはまるわけではありません。しかし、これまで規則性がないように思えた行動や事象などが(大げさに言えば)神が創ったかのような法則に支配されているとは面白いと思いませんか?
かつて、「英語・会計」をビジネススキルといったひとがいました。もちろん私は賛成です。しかし、同時に「統計・プログラミング」のスキルも注目すべきではないか、と私は思うのです。統計は、まだ来てない将来を予見する最高のツールですから。