4-(3)-2 適切な発注数を決定する「私の経験」
以前、定量/定期発注方式を採用しようとしていた数々の製品の「標準調達期間中の消費数量(発注してから製品が納入されるまでに使ってしまう数量のこと)」を調べようとしたことがあります。
私も含めて、各バイヤーに対象製品の「標準リードタイムを教えろ」という命令が下りました。新しいシステムを導入しようとしていたときで、標準リードタイムを設定しようとしていたのです。その標準リードタイムの間に消費してしまう数量が、「標準調達期間中の消費数量」になるわけですから、この設定は非常に大事なものでした。
すると、各バイヤーが回答した標準リードタイムはヒドイものでした。なんてことのない普通のプレス加工品が「標準リードタイム30日」となっています。と思えば、いつも一週間で納入されるチップ抵抗器は「標準リードタイム60日」となっています。
通常であれば、30日ほどあれば全て調達できる(そして、そのときもできていた)製品群が3ヶ月ないと調達できないことになっていました。
つまりこういうことだったのです。
標準リードタイムが決まる。そして、経済的発注量が決定する。そうしたら、バイヤーは必ずそのリードタイムは守りきらなければいけない。その経済的発注量を必ず期間内に納入することが求められる。だから、その標準リードタイムに安全(余裕)を加算しておけ。そういう意識が働いたようなのです。
本来ならば20日で手に入るところも、営業マンから25日と答えられる。それをバイヤーはさらに30日と社内に答える。こういうスパイラルが起きていたのです。
考えてみれば、標準リードタイムというものは大変難しい問題をはらみます。サプライヤーが専用生産ラインを持っている場合ならまだしも、様々なお客向けに生産している場合は一言で標準リードタイムは決定できません。
したがって、30日で生産できるものが、注文の込み具合によっては35日かかったりします。あるいは、逆に余力がある場合は、25日で生産できる可能性もあります。あくまでも標準リードタイムはその名の通り「標準」でしかありません。
リードタイムを長く設定するだけならばまだマシな方で、バイヤーによっては100年かかっても消費できないような数量を確保し「安全在庫」として備える猛者もいます。確かに生産は止まらないかもしれませんが、あまりに無駄な買い物です。自分の金であれば、そんな無駄遣いはしないくせに。
結局バイヤーだけで各数値を設定しようとすると、どうしても自分を守るために安全日数を確保しようとします。様々な防止策が練られてきましたが、一番効果があるものは生産管理をしている担当者とダブルチェックするというものです。生産ラインを確実にまわしたい担当者は、あまりリードタイムが長くなることを好みません。
しかし、生産管理の担当者にしても安全在庫を必要以上に持つことで自身の安全を確保しようとするかもしれません。その場合は、年間の生産量と比較して、どれだけ不要な量を持っているかということを外部部門(経理部門など)から指摘するしかありません。
適切な在庫量しか持たないように自戒し周囲にも注意を促すことが大切です。