2-(1)-3 調達・購買部門の強い企業、弱い企業「自社の制約を超えて」(調達・購買とは何をするのか)
しかし、です。矛盾するように感じられるかもしれませんが、自社の調達・購買部門を強化することはできます。業界のナンバーワンの影響力を持つことはできないかもしれません。ですが、発言力をより持った部門に変化させていくことはできます。
私が知る限り、社内外に強い影響力を持った調達・購買部門とは下記の条件を満たしています。
(1) バイヤーのレベルが高く、またスキルアップさせる仕組みを持っている
(2) 高い目標を社内に向けてコミットし、実現させている
(3) サプライヤーに対して調達・購買部門が最終決裁権限を持っていることを認知徹底させている
難しくもない、しかしそれでいて地道な活動を要求するものばかりです。
(1)は、当然のことかもしれません。社内外にメッセージを発言しようとしたときに、調達・購買知識を持っているということは相手を信頼させる前提だからです。ただし、企業によっては設計者などの他部門の方がバイヤーよりずっと調達・購買の知識を持っている場合があります。これでは、信頼もされませんし、影響力を行使することなどありえません。また、知識体系が非常に整っており、あるレベルを通過したバイヤーが次に一体何を学べばよいかを明確にすることが必要です。
(2)も重要です。殻にこもりがちな調達・購買部門は、そもそも社内にコミットしていません。「このサプライヤーを使おう」というときには「一体それによってどんな良いことが起こるのか」を明確にせねばなりません。「俺たちのことを聞いてくれたら、○%の原価低減を約束する」とか「不良発生0%にする」とか「納期遅延ゼロ化する」といったコミットをしないから、関係部署も聞く耳を持ちません。高い目標を自ら掲げ、社内にコミットすること。これが必要です。そこまで言ってしまえば、社内部署も協力せざるをえませんから。
(3)は、強調してよいはずです。よく「サプライヤーが直接設計者と連絡を取っている」という話を聞くことがあります。バイヤーには、全てが決まったあとに見積りだけをサプライヤーが持ってくるのです。これでは、バイヤーの立場などありません。しかし、中には「面倒くさいことを言ってこないで。設計と話してから決まったら教えて」と言ってしまうバイヤーがいます。あくまで社内の窓口はバイヤーであって、他部門ではないはずです。決裁責任はバイヤーにあるはずです。それを自ら他部門に丸投げしてしまってはいけません。それでは社内にもバイヤーは単なる「支払い処理係」という認識しか持ってもらえません。必ず自分のところに社内外から連絡が届くように仕向け、自ら決定のプロセスに関わってゆくこと。こういう積み重ねが何より大切です。
(1)~(3)で説明したような部門のマネジメントの徹底と、バイヤーの意識向上があってはじめて強い調達・購買部門は実現するはずです。
強い調達・購買部門とは、リバースオークションや電子調達システムを導入したからといって一朝一夕に出来上がるものでは決してなく、強い意志と日々の愚直な積み重ねの果てにあるからです。