4-(8)-2 調達リスクの管理「私の経験」

「これは詐欺だ!」

つい営業マンに対して叫んでしまったことがあります。オプトスイッチを調達しようとしていたときです。その製品はカナダ生産であることもあり、納期がなんと半年ほどかかるものでした。私はいくつかの価格シミュレーションをした結果、アメリカのIPO(International Procurement Office)経由でカナダにドル建ての発注を行うことにしました。見積り通貨はアメリカドルです。その当時は輸入比率の拡大が叫ばれていたときでもあり、海外調達をせねばならない雰囲気もありました。

そして、半年するとドルはTTMレートで6円ほど上昇してしまいました。たった6円と言うことなかれ、です。当時20万円ほどしたオプトスイッチでしたから、それだけ上昇してしまうと一個当たり1万円は価格が上がってしまいます。それを400個ほど調達していましたから、ああ恐ろしい。

IPOのメンバーはさかんに海外調達を勧めてきており(当然です。口銭が増えるから)、その結果レートを見たときは愕然としました。価格は高くなる、しかもやりとりは全て英語、納期調整も自分でせねばならない。原価が高くなったと部内外からも責められました。

参考書によっては、「企業の輸出額と輸入額を均等させることによってリスクを相殺できる」としているものもあります。これは有効なアドバイスです。マクロな観点から私は8-(3)項にてグローバル調達の必要性を説いています。しかし、会社全体の収支と担当しているプロジェクトの収支は別の話である、というリアルな事情もあるでしょう。確かに会社全体のリスクヘッジになったとしても「自分の担当している製品が割高になった」ことの責任から完全に免れた例を私は知りません。

ちなみに私は、同じ頃に中国では増値税還付残問題でも困らせられました。還付残とは、それだけで1章が割けますが、簡単に説明すると「中国政府から戻ってこない税金(つまりその分価格が実質的に上昇する)」のことです。しかも、品目によって方針がコロコロ変わってゆきました。

もちろん、誰も為替・税率は完全には予想できないものです。特定勢力の詐欺ということはありえません。私の被害意識は単なる自己の甘さを露呈していただけのものです。だからこそ、私はリスクをいかに最小限に抑えることができるかを考えてきました。

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