4-(8)-3 調達リスクの管理「できるだけリスクを減らすために」
私が実際に役立つと思える為替・税率リスク回避法は、下記のようなものです。あまりに初歩的な内容と思われるかもしれません。しかし原点に立ち返るものです。
(1) 円高のときにまとめ買いする。円安のときは、そもそも海外調達すべきなのかを再考慮する。なんでも「海外調達ありき」で進めない。税率が変動する際は猶予期間に輸入を止める勇気を持つ。
(2) サプライヤーに円建ての見積りにしてもらう。こちらは日本のバイヤーであり、軒下渡し条件の日本円で払いたい、ということを認識させる。為替・税率リスクがあるというのであれば、その分を任意に加算して競合に参加してもらう。
(3) 商社に仲介してもらう。為替予約を使って、金融機関と一定為替条件での売買を確定してもらいリスクを回避する。あるいは、一定の為替条件を著しく逸脱したときにはルールを設定しておき、為替シェアリングを行う(益も負担も半々に分担する)。税率変動も同様。
そもそもリスクを負う、とはメリットを享受することの裏側に常にあるものです。ときに海外調達を行うことだけが自己目的化し、メリットが何であるかを忘れてしまうことがあります。技術的な先進性や供給リスクを考慮してのときは目的がはっきりしているものの、コスト低減のための海外調達は海外調達をすること自体が絶対化せぬよう注意する必要があります。
調達・購買部門には、必ず「海外調達かぶれ」が一人はいて無理に海外調達を推進しがちです。たいていは、自己の英語力を周囲に自慢したいか、何も考えていないかのどちらかですが、それはよいとして、英語であれば問題なく意思疎通できる私でも無理な海外調達には何の意味も感じません。リスクをとる前に、まずメリットについての吟味が必要であるはずだからです。