5-(1)-3 製品知識こそ力「製品知識を身に付けるために」

自分が担当している製品に関わる本を3冊読むところから始めるとよいと思います。

1冊目は入門編。2冊目は高度な内容を含む本。3冊目は中くらい。どの本を選んでもたいした差はありません。

「○○入門」というタイトルの本であっても、読んでみると得ることはたくさんあります。3冊読めば、調達・購買内では最もその製品に関して詳しくなるでしょう。10冊読めば、設計者よりも詳しくなるはずです。

「仕事のことでお金を使うなんてもったいない」というバイヤーもいますが、10冊買ったとしても3万円もしないはずです。何も知らないのに仕事をするわけにはいきませんから、その程度の出費は当然だ、と思います。

本以外の情報としては、会社には先人達がコストテーブルというものを時間かけて作ってくれているので、活用すべきです。ほとんど使えないようなものもありますが、たいていのコストテーブルには製品の働きやコスト決定に重要となる要素が網羅されていることがほとんどです。

また、重要なのはバイヤーが製品仕様の打合せに積極的に参加しに行きましょう。製造業に属しているのにものに関心が薄いということは本来、本末転倒です。「仕様を決めるのは設計者、金を決めるのはバイヤー」という固定概念を捨てて、どんどん上流に入り込むべきです。

「開発購買」という用語があります。設計の初期段階から調達・購買が参画し、QCDに優れた製品を生産していこうという試みです。難しく特別な手法のように感じますが、「開発購買」は新たに組織を作らないとできないわけではなく、個人の工夫次第でいくらでも可能なことです。

ところで、私が製品知識を最も効率的に得ることができたのは「試しに作ってみる」ことによってでした。その当時、電子・電気部品を担当していた私は、各部品の働きが全く分かりませんでした。私は工作雑誌を購入し、手軽にできそうな自作コントローラを作ることにしました。基盤を買ってディスクリート部品を集め、ハンダ付けをしました。

そうすると、かなり各部品の働きがよく分かるのですよね。「おお、水晶はこのために取り付けるのか」とか「抵抗器がこういう理由で必要なのか」など、次々に驚きがあります。文系なのか理系なのかはほとんど関係がありません。秋葉原で買えば部品など安いですし、何よりも自分で作成したものが動く!という喜びはもっと事務系の社員に共有されてよいはずです。

そして、製品に関して十分詳しくなってから戦略や各種スキルを身につけても遅くありません。もちろん、技術は日々進化しており、設計者ですら各分野の高度化に追随することは難しくなってきていますから、バイヤーが完全に技術を理解できるはずはありませんが。

ただその一方で、現在はバイヤーのコミュニケーションの能力の必要性ばかりが強調されているように私は思います。社内外をコーディネートする能力の大切さは認めますが、ときにそれが「自分達は技術・仕様のことは分からない」という言い訳のように使われることがあります。

まずはものを知る、という姿勢を徹底していかねばなりません。

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