6-(2)-2 開発購買をいかに進めるか「私の経験」
「いまさら間違っていたなんて言えませんよ!」
設計者から怒鳴られたことがあります。部品の見積りを見せたときでした。私から見れば、別に高いとも思えずリーズナブルと判断できました。以前購入したレベルと比しても問題があるように思えません。そこで、設計者に対して「このくらいのコストになりそうだ」と報告したところ、彼は急に怒り出すのです。「そんなコストのはずはないでしょう。もっと安いはずです」と。私は反論しましたが、聞いてもらえません。
話をしてゆくと事情が分かりました。その当時、開発購買推進というスローガンの中で、その名の通り「開発購買課」というセクションが設立されていました。そこが窓口となり、各設計部門と仕様の打ち合わせをすることになっていたのです。私たち現場のバイヤーは、その下流でサプライヤーからいかにより安価に調達するかを考えろ、と言われました。
問題は、その開発購買を推進するメンバーがサプライヤーと直接やり取りをしない人たちだったことです。設計者は「開発購買課から『こういう仕様にしてくれ』と要求があった」と言います。「そうすれば、理論上コストが下がるから」とも。
しかし、理論上コストが下がることと、実際の見積りの価格が下がることは別のことです。サプライヤーが置かれた状況もあります。材料の市況もあります。コストテーブルで計算したら下がるかもしれませんが、そもそもその下がった価格で売るかどうかはサプライヤー次第です。しかも、私の例で言えば単純な理論コストの積み上げの間違いがありました。
そういうことを設計者に伝えましたが、もう設計者の予算はありません。「もう予定原価が間違っているなんて言えないですよ」と。開発購買課に苦情を言っても「その理論コストで調達してくるのがキミたちの仕事だ」と言うだけ。私はサプライヤーに何度も足を運び、そのときだけは無理をお願いし、なんとか「理論コスト」に合わせた後、設計者には「今後、開発購買課の言うことは一切聞かず、私に相談してください」と依頼しました。