6-(2)-3 開発購買をいかに進めるか「開発購買の問題点」
開発購買、という言葉に対していくつかの誤解が生じているように感じます。その中で、代表的なものが次の二つです。
(1) 開発購買は、専門のセクションが実施するものだ
(2) 開発購買によって原価が下がればそれだけで成果である
まず、(1)ですが、開発購買という名のついたセクションを作らねば開発購買は実施できないという考えは思い込みです。また、開発購買というものが新しい取り組みだという考えも同様に思い込みです。
そもそも、日々の調達活動から得られた情報を設計部門にフィードバックし製品仕様に盛り込む、ということはバイヤーであれば当然やらねばなりません。それを特別なセクションしかできないと思い込み、現場のバイヤーと分離することは愚の骨頂です。多くの組織で見られる開発購買の失敗は、開発購買セクション(たいてい年配者や設計出身者が多い)のやることが現場と乖離していたり、反していたりすることにあります。ちゃんと見積り書を入手し交渉するところまで実践できない人を開発購買に参加させてはいけません。
また、現場のバイヤーが開発設計の上流に参加していくことは難しくないことです。設計部門と定期的なミーティングを開こう、と提案するだけで可能になります。多くのバイヤーは自ら開発設計段階の情報を入手しようともしていませんので、そのような会議で現在進行中の開発品を知り情報交換するだけです。
重要なのは、開発購買ということは特別ではなく、日々の業務で実践せねばならないと認識することです。現場のバイヤーがサプライヤーの最適仕様を伝え、それと社内の要求仕様との合致点を模索してゆくことです。
次に(2)に関して。どうしても開発購買というと、原価が下がることばかりに注目されがちです。私も主な目的としての認識は持っています。しかし、そもそも開発購買の目的は「目標原価達成」だけではなく、QCDに優れた「魅力ある製品作り」にもあります。
開発購買を進めてゆくと、標準化活動に携わることになります。これは、社内で基準を持ち、できるだけ同一の部品を使ってゆこう、という活動です。確かに、設計者各人がバラバラな部品を選定していたら種類は膨らむ一方です。実際に、同仕様の部品を様々なサプライヤーから調達している例もあります。そのような際には部品の標準化活動は有効でしょう。さらに、どちらを使っても大差のない部品には、このような標準化活動は推進されるべきです。
しかし、行き過ぎるとそのお題目だけが一人歩きすることになります。標準部品と認定されたものを使うことだけが正義とされ、それを選ばなければ悪とされ出します。ここでは、そもそもお客に対して「魅力ある製品作り」を行おうという意識は消えています。
そもそも製造業はお客に買ってもらえる製品を作らねば成り立ちません。お客の求めるものは日々進化し、要求レベルは高くなっています。ある自動車メーカーでは一時期使用部品を可能な限り限定しました。しかし、その結果、市場に対する魅力度が低下し、現在では部品種類を拡大する方向に進んでいます。