安さを疑わなければならない理由

2020年10月16日、政府から企業活動における人権尊重の促進を目的にした「ビジネスと人権」に関する行動計画が発表されました。発表内容で政府は企業に対して3つの「期待」を発表しました。

 

(1)人権を尊重する責任を果たすというコミットメント(約束)を方針として発信する(2)自社やサプライチェーンの中の人権侵害を予防したり調査したりする「人権デューデリジェンス」を実施する

(3)人権侵害を引き起こした際に被害者を救済する仕組みを築く

 

(2)には「サプライチェーン」が含まれます。この発表では、サプライヤに対する人権侵害予防の取り組みや、実態調査を行い、サプライヤの起こした人権侵害にもなんらかの対応策立案の必要性が改めて示されたのです。

 

新しい話ではありません。すでに多くの企業で「CSR調達」や「持続可能な調達」といった形で実践されていますし、全社的には「SDGs」の取り組みの一環として対応しているはずですね。重要な点は、CSRや持続可能性、SDGsのいずれにしても、事業目標と同じレベルで議論され、企業や事業の戦略に内包できているかどうかです。かつての公害は事業目標達成のため自然環境を犠牲にしていたのです。

 

SDGsの基本的な考え方に「誰も置き去りにしない」があります。企業は自社の事業目標達成のために、日夜考え行動して結果を競っています。事業目標達成に置き去りにしたり、蔑ろにされたりがあってはならないのです。調達・購買部門の場合、サプライヤが誰も置き去りにしていないかどうかの確認が必要です。

 

政府の発表は「人権」で「置き去り」が発生していないかどうかの確認を求めています。問題を発見したら、救済処置を求めています。「救済処置」は、飽くまでも最後のとりでであり、問題を発生させない、人権面での「置き去り」を起こさないサプライヤの選定が必要です。適切な従業員の待遇にはどの程度コストが発生するのか。適切なコストをベースにした価格レベルの見極めが、調達・購買部門の責任です。

 

「ビジネスと人権」の考え方を元にすれば、安価な価格を提示するサプライヤには注意が必要ですね。安いからよいのではなくなぜ安いのかの掌握が必要です。バイヤは高価格には疑問を感じ、相応の対応ができるはずですね。しかしこれからの時代、これまでなら拍手喝采したいような魅力的な価格を提示された場合、とくに市場価格を下回る価格に「この価格が提示できる理由は何だろう?」と気づかなければならないのです。この魅力的な価格の影で、誰か置き去りにされてはないかと、安さの根拠を追求しなければならないのです。

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