バイヤはできるだけ高くお金を売る
調達・購買担当者が集うイベントで、外資系企業のマーケティングマネージャーの講演を聞きました。印象的だったのは「営業パーソンが購買担当者に会う意味がない」と言い切った点でした。
誰が購入する内容を決めるのか。購買部門のバイヤではなく購買を依頼する要求部門であり、依頼者にこそ会うべきであるとの主張です。返す言葉もありません。私も営業していた頃、バイヤとか購買部門へ顔を出さず、依頼部門にばかり通っていました。たまに購買部門に呼ばれても、理不尽な値下げ要求を受けるだけだったのです。
そんな中で調達・購買部門への異動を命じられた私は困り果てました。どうしたら営業パーソンと話ができるのか。問題なのはサプライヤの営業パーソンと話ができるかどうかではありません。対応巧みなサプライヤは、購買部門の私ともきちんとコミュニケーションを取るのです。重要な点は、依頼元である技術・設計部門であり、サプライヤであり、一緒に仕事を進める上でどんな付加価値を提供するかでした。お付き合いではなく、必要性をもってサプライヤの営業パーソンと話がしたかったのです。当時の手帳を見返すと何でも思い当たる取り組みを行っていました。
【社内依頼部門への取り組み】
・サプライヤとの打ち合わせアレンジ(スケジュール調整と場所確保)をする
・新たなサプライヤを提案してみる
・サプライヤの営業パーソンの代わりに議事録を作成する
・サプライヤ出張で交通手段の手配をする(切符や宿泊先の予約)
・サプライヤ戦略(発注先選定の考え方)の説明(なぜこのサプライヤなのか)
・社内外の打ち合わせを主催する
・トラブルに積極的に対応する(真っ先にサプライヤへ赴く)
【サプライヤへの取り組み】
・感謝の気持ちを欠かさず、相手に伝える
・指示ではなく相談する
・値下げ要求ではなく値下げが必要な理由を、資料を使って説明する
・バイヤ企業だけではなく、市場や顧客のニーズを伝える
・営業パーソンの依頼事項や困りごとには最優先で対応する
・突然の来訪にも可能な限り(他に予定がなければ)対応する
・ミスを糾弾するより、影響回避と再発防止を優先して対応する
周囲の同僚を見て、できるだけ同僚がやっていそうもない対応を心がけていました。ふと考えると、調達・購買部門の仕事って、営業時代となんら変わらないと考えるに至ったのです。営業時代はモノやサービスを販売していました。調達・購買部門では、いうなれば「お金」をできるだけ高く販売する仕事だと理解したのです。同じ1000円を払うのでも、よりよい製品や、サービスの提供を受ける。売り買いは価値の交換なので、できるだけ自社の予算を高く評価できるモノやサービスを購入すればいいんだと思ったのです。そう考えれば、調達・購買部門の前のキャリアが活用できますしね。調達・購買部門の仕事に少しなじめなかった私に、進むべき道が見えた瞬間でもありました。