4章・(2)-1「フリー」経済へと向かいつつある現在
キーワード「無料ティッシュ」「フリー商品」「クオリティ」
・無料は手抜きの意味ではない
フリー経済とは、商品の多くが無料になってしまうことを指します。
たとえば、あなたが街中を歩いていると、無料で配られるティッシュを受け取ったことがあるでしょう。しかし、フリー経済と無料ティッシュには大きな違いがあります。フリー経済は、実際の商品を無料(フリー)にしているのにたいして、ティッシュは単なる販促ツールにすぎません。無料ティッシュは、そこに挟めた宣伝用紙を見てもらうことを第一目的にしています。しかし、フリー経済の商品は、実際の売り物を経験してもらうことに目的があるのです。
私は以前、大学のときフリーペーパーの手伝いをしていました。無料ミニコミとも呼ぶこの媒体は、雑誌をタダにする代わりに、どこかの会社から広告費をもらい、それで制作費をまかなうモデルです。会社は、その無料誌がたくさんの人の目にふれることで元をとります。
私が手伝っていた媒体は弱小で、ほとんど配布部数もありませんでした。ただ、現在でも大手企業が配っている無料紙は多く存在しています。その他にも、インターネット上にある無料で読める情報サイトは数え切れません。
フリー商品は、まずそれに触れてもらい、気に入ってくれた少数のお客にお金を払ってもらうことで成り立つと説明しました。ここで重要なのは、「気に入ってくれた少数のお客」という存在です。すなわち、なんでも無料にしたからといって、それだけで物事が上手くいくわけではありません。無料だからこそ、「これが無料なのか」とお客に思わせるクオリティが必要なのです。
- フリー商品の必須条件:無料だからクオリティが低くても大丈夫ということはなく、むしろクオリティが求められる
無料にすれば、なんだって大丈夫、と考えた多くの試みは失敗しています。「無料だからお客は許してくれるだろう」という甘えは許されません。むしろ、「無料なのに、こんなに凄いのか」という驚きを提供できないフリー商品は、たいてい失敗します。
まさに私が手伝っていたフリーペーパーが失敗してしまったように。