5章・(3)-2 考えておきたいフェアトレードのこと
・値下げをした会社が悪いのか
また、似たような議論に、「デフレ悪玉論」があります。たとえば、ユニクロなどの安価な商品を提供してくれる会社を指して「そんなに値下げするから、まわりがつられて値下げ合戦を始めている。売上げが下がり、社員の給料も下がり、不景気になっている」と。しかし実際は、ユニクロは社員を増やすことで雇用を創出し、わたしたちの生活を豊かにしてくれています。お客が安価な商品を求めるのは当然であり、市場に追従できない会社が消え去っていくのは、ある意味当然のことです。
商品を値下げすることを批判するのであれば、「統制経済」を実現するしかありません。統制経済とは、国が商品の価格を決め、会社間の競争を止めてしまうものです。1900円で売られているフリースを、5000円で販売するようにし、それによりみんながお金をたくさん支払うことで、豊かな社会が実現できるでしょうか。そんな国に住みたいでしょうか。価格は市場が決めることであり、それを否定するような試みは、ほとんどの場合は失敗します。
労働コストを上げたければ、その国の労働者しかできないような技術を開発・発揮するしかありません。それが市場に認められれば、労働コストはそれに見合った分上昇していきます。それが市場の理論であり、価格の決定権は市場にあるというわけです。
もちろん、安易な値下げは会社を危なくします。ただ、その価格でなければ売れないのであれば、その安価な価格にしなければなりません。欲しがる人がたくさんいれば価格は上がり、同じような商品の供給が過剰であれば、価格は下がっていくでしょう。それはこれまで見てきた需要と供給のバランスによって決まります。
市場が決めたコストや市場が決めた価格に抗うことはできないのです。