1章・(6)-1 市場による「価格差」を利用する

キーワード「古着」「スクラップ」「需要差・供給差」「コスト差」

 

・廃棄物を着て歩けたなら

 

この日本でゴミを漁っている人たちがいる、という事実にあなたは何を思うでしょうか。

アメリカでは、人びとは不要になった衣類を回収箱に捨ててしまいます。それらは収集所されるのですが、実はそこから衣類がピックアップされ、少なからぬ数が日本の古着市場に流れていくわけです。もちろん洗濯されているでしょうし、私もよく買うことから、古着屋を批判する気にはなれません。ただ、ここには、あるところで無価値なものも、違うところでは価値を持つことが象徴されているように感じるのです。

かつて、「スクラップエコノミー」と呼ばれた商売のやり方もあります。鉄くずや古紙を日本で再生しようとすると、そのコストに見合いません。日本では人件費や設備費がかかるために、再生してもそれを賄いきれないわけです。しかし、場所を人件費の安い途上国に持っていくと、輸送費をかけたとしてもじゅうぶん元が取れる商品に化けていきます。古紙や(一部の)ペットボトルは、日本では価値がないため捨ててしまいたい。それが彼らから見ると「宝の山」なのです。少し前には、中国国内でリサイクル長者がたくさん生まれました。そりゃそうですよね。タダ同然で買ってきたものが大金になるのですから。

では、なぜ市場によって価格差が生じるのでしょうか。それは、次の二つの理由によります。

  • 市場内での需要差・供給差:その市場内で、特定商品の需要がほとんどなかったり(価格低下をもたらす)、供給が過小だったり(価格上昇をもたらす)することによるもの
  • 市場内でのコスト差:商品を提供する供給者に生じるコストが、他の市場と比べ相対的に低かったり(価格低下をもたらす)、高かったり(価格上昇をもたらす)することによるもの

古着の例が前者、スクラップの例が後者といえるでしょう。

携帯電話からレアメタル(希少な貴金属)を回収する商売もありました。携帯電話にはそれらが多く使われているのですが、日本でリサイクルしようとするとコストが高く、使用済み携帯電話が海外に流れていたのです。もったいない話ですよね。近年では、日本でも低コストで回収する技術が確立されようとしています。

ただ、ここにも、日本人の気づかない市場による価格差が存在していました。

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