2-(5)-3 調達・購買力はどのようにして獲得するのか「購買力の獲得に向けて」
この機会があったために、私は彼から調達・購買業務について色々と訊くことができました。すると、前述の①たくさん買うこと ②長く安定的に買うこと ③言ったことを実行すること を実践していた人でした。
①のたくさん買うことは、別に集中購買や共同購買だけが実現できるわけではありません。組織内で同じものを別の部門が別々に注文していたりすることがあります。そういうものをまとめて注文するだけでかなりの量になったりします。しかも交渉がやりやすくなります。それは後年スペンドアナリシスという大袈裟な言葉で紹介されていたりするのですが、早い話が「その企業内で何をどれだけ調達しているか分析しましょう」というものです。実はバイヤーは目の前の価格決定や納期業務に奔走してしまい、一体一年間で何をどれくらい調達しているかを知らない場合がかなりあります。
他部門が独自に発注しているのならばまだしも、同じ調達・購買部門で違う課が同じモノを別々に注文していたりします。その総量を把握するだけでどれだけのコスト低減のネタが出てくるか分かりません(サプライヤーも担当者が別だったりして、把握していないときもあります)。
②の長く安定的に買うことはサプライヤーとの関係を築く際に重要になってきます。長期的、ということはサプライヤーの中に知り合いが増え、人間と人間との深化もできる、ということですから。それが相手に対する調達力として形作くられてゆくことは間違いありません。もちろん、それには単に長く取引する、というだけではないことは言うまでもありませんが。
③の言ったことを実行することは、要するにサプライヤーが信じるに値する存在になれるかということです。当然のことを当然にやるだけのことです。
調達・購買部門はサプライヤーに対して戦略的に、そして誠実な態度で業務を行わねばなりません。あくまでも調達・購買力とは他社との関係の間にのみ成り立ちます。相手に信頼してもらい、戦略を具現化するためにはどうしたらよいか。そういうことを考え、行動してゆくことが大切です。