6-(4)-2 急な値上げ・生産中止にいかに対応するか「材料値上げ、生産中止狂想曲」

会議から戻ってくると書類の山。それも全て生産中止資料の束。私はそんな時期を過ごしたことがあります。「昨今の厳しいコスト要求に応えるべく」云々という文面の後に「受注の少ない製品に関して生産打ち切りと致したく」と続く書面をずっと処理していました。

そういうサプライヤーは「厳しいコスト要求に応え」てくれていないときがほとんどだったのですが、それはいいとして、ほとんどの場合は「新しい製品が出たから古い製品なんてもう作っていられません」ということです。たいていはその文章が発行された3ヵ月後までに保守用まとめ発注(ラストバイ)をせよ、と指示されます。以降は、その製品を調達することは諦めろ、というわけです。私は、そういう書類を受け取っては、社内の需要数を調べて、それを基に価格を交渉し、納期について打合せし・・・ということを繰り返していました。

何十回と経験した生産中止の処理の過程では、需要数を提示忘れた設計者から「せめて回答猶予は2ヶ月ほしい(だから、回答忘れた)」とか「すぐに生産中止させる調達・購買部門が悪い」とかいうクレームが相次ぎます。散々でした。

ときに「契約書で生産永続を死守させよ」というアドバイスをする人がいますが、現実的には何の役にも立ちません。契約など、しかるべきところに訴える場合にのみ効果があるもので、それ以前は紳士協定に近いものです。せいぜい「生産中止にするのであれば、半年前に教えてください」と指示するくらいです。中には「受注が落ち込んでおり、50%コストをアップさせてくれないと生産継続は難しい」という脅しのような連絡をしてくるサプライヤーまでいます。

それを抑え込んだと思ったら、次は値上げ申請をしてくるサプライヤーたち。「バイヤーなんてサプライヤーが頭を下げてくる前で偉そうにしているだけでしょう」という他部門の思い込みとは全く異なった現実にぶつかっていました。
営業マン:「ご存知の通り、最近の材料市況は上昇する一方でして」

私:「何の材料がいくら上がったんですか?」

営業マン:「鉄です。鉄が上がってどうしようもなくて」

私:「じゃぁ、この製品の使用量は?」
営業マン:「・・・」
私:「想像するに、この使用量は3キロくらいですよね?市況の上がり方から見ても、この値上げは過剰なのでは?」

営業マン:「・・・」

「よし、一件解決」と思えば、次は「樹脂材料が上がった」と言ってくるサプライヤー。私は一体何なんだろう、と嘆いていました。

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい