5章・(4)-1 排出権取引は美人コンテストそのもの
キーワード「美人コンテスト」「株」「市場」「みんなの意見」
・美人コンテストで選ばれる「美人」たち
美人はなぜ美人なのでしょうか。美人という定義は時代によっても異なりますし、これまでさまざまな研究がなされてきました。しかし、一つ明らかなことがあります。それは、「みんなが美人と思っている」ということです。なにやら禅問答のようですが、「美人とは、みんなが『美人』と思うから美人なのだ」ということになります。しかも、これは私の発言ではなく、著名な経済学者のものです。彼の名はケインズ。ケインズ経済学という財政政策を是とした(ほんとうはそんなに簡単なものではありませんが)理論を立てました。
ケインズが言ったのは、「なぜ特定の株価が高まるのかといえば、それはみんなが欲しがっているからだ(大意)」ということです。これを彼は「美人コンテスト理論」と呼びました。美人も株も、みんなが欲しがっていれば、需要が高まり、それが価格上昇につながるということです。これは重大な示唆を与えてくれています。市場が価値を認めるものこそが、価値の高いものだということです。
もちろん、これはある種、極端に解説しました。この解説でいくと、投資家全員の行動を先読みすれば、将来高まる株式がわかるということになります。その予想に比べて現在の株価が安ければ「買い」、逆に高ければ「売り」となるでしょう。現在では、株価の評価方法として、大きく二つの考え方があります。
- ファンダメンタル分析……企業の財務状況や企業価値を計算して、あるべき株価を算出するもの
- テクニカル分析……市場での売買状況を見て、将来の株価の動きを予想するもの
本論とは離れますので詳細の説明は省きます。ただ、企業の損益計算書や貸借対照表を分析するのが前者で、何週間周期で株価の山や谷がやってくると予想するのが後者です。一般的には、ファンダメンタル分析は正攻法で、テクニカル分析はやや占いに近いものだといわれます。