5章・(4)-2 排出権取引は美人コンテストそのもの

・美人とCO2をつなぐもの

 

しかし、私はこのテクニカル分析をまったく否定するわけではありません。理論的には「ありえない」と考えます。ただ、理論的にありえないことも、起こらないわけではありません。その企業の本来の価値よりも高い株価が、なんらかの理由によって実現することもありえます。要するに株といっても市場で売買される商品ですから、欲しがる人がいれば高くなるのです。

これを排出権取引と対比して説明するのは不遜でしょうか。本章の冒頭で説明した排出権取引は、完全にヴァーチャルな「温室効果ガスを排出する権利」を取り扱うものです。これまで誰もそのことに価値を見いださなかったために価格がつくことはありませんでした。しかし、あるときからその形ないものに価値を見いだし始めたために価格がつきました。

美女がカラオケで歌っても、素人であればお金をくれる人はほとんどいません。しかし、芸能人としてその美貌が価値あるモノとして認められれば価格が創出されます。本来は、そのモノに内在する価値に対応して適正な価格がつくはずです。しかし、実際はみんなから価値があるものだと判断され、流通しはじめてから、価格がつきます。

では、その「価値あるもの」とは、どのようなものなのでしょうか。その答えが、「美人コンテスト」の投票行動につながります。すなわち、「そんな疑問の答えなどない。ただ、いえるのは、みんなが美人と思っているという事実がある」ということなのです。

そして今日も、多くの人が次の「美人」を創出しようと試みています。「美人の創出」とはすなわち、誰かの商品を増やし、それにより利益が生まれるということだからです。

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