調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 2章(1)-10
サプライヤーの分散が機能しなかった原因。経済産業省の産業構造審議会産業競争力部会のレポート(http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004660/23_002_haifu.html)によると、産業構造の「ダイヤモンド構造化」と分析されています。従来のピラミッド型産業構造では、企業数が親企業は一番少ない。一次下請よりも二次、三次下請けの方が企業数は多い=供給源も多いと考えられていました。ところが、グローバル競争の激化によって、徹底的な効率化・低コスト化が進められた結果、二次サプライヤー以下で、中核部素材の生産が特定の企業に集中、企業数が上位(親、一次サプライヤー)よりも少ない二次サプライヤーが生じたのです。このような事態が生じた原因は、小ロット生産とコスト低減の両立を図るためにサプライヤーの集中化が進み、生産拠点が集中し新規投資が減少した、とされています。
バイヤーとして、直接取引を行なうサプライヤーへの関心は高いはずです。しかし、サプライヤーのサプライヤーにまで関は持ちません。もちろん、関心を持つバイヤーもいるでしょう。ただ、多くの場合は二次以降のサプライヤーにまで意識が及ぶことは少ないはずです。今回発生したサプライチェーンにおける混乱は、二次以降のサプライヤーに意識の及んでいないバイヤーの認識を浮き彫りにしました。今回の震災で問題になった二次サプライヤーは、モノでなくプロセスで使用される薬剤といった類を供給していました。私もまさにこの問題への対処に悩み、途方に暮れた一人です。そのような事態は全く想定の外でした。解決策も見当がつかず、サプライヤーからの情報をただ待つだけでした。これまでの集中か分散かといった議論が、いかに平常時のみを想定していた表面的なものであったかを思い知らされたのです。
このような事態に対して、サプライヤーを東日本、西日本、そして海外と3社持つ、というような方針を下した企業もあります。3つのサプライヤーが同時に供給不能となる事態は考えづらいというのが根拠です。一方で、この事態を生んだとされるグローバル化の進展で発生した、現在進行形で継続する低価格競争への対応策も一緒に考えなければなりません。とても難しい問題です。私は闇雲に「地理的に異なる地域に3つ」といった結論を出すべきではないと考えています。まずは、各企業のバイヤーが自分の担当領域における震災影響を正しく評価すること。その上で、サプライヤーの選定に震災発生リスクへの対応という評価項目をどのように加えるかを考える必要があるのです。