調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 2章(1)-11
2)一社購買の思わぬ効用
一社集中としていたサプライヤーは、そもそも震災発生時、供給が滞るリスクが高いとされてきました。しかし震災被害によって供給力に大きな被害を受けなかった場合、一社しかない集中した状況によって、サプライヤー側に「復旧したらまず供給を再開する」といった意思決定を促す効果があったようです。このようなケースの実現には、二つの条件をクリアする必要があります。一つ目は良好な取引関係を長期的に継続していること。二つ目は一社購買状態をサプライヤー側も強く認識していることです。一社集中とは、事業形成の一要素を1社に依存する事です。通常はリスクと捉えられるこの依存関係が、ビジネスライクな関係よりも震災後に優先度を高まる要因となったわけです。
だから分散よりも一社集中が良いとは言い切れません。一社集中状態のサプライヤーと、どのようなリレーションを確立し継続してきたかが問題なのです。震災後に供給の優先度が高まったということは、日頃の良好な関係が震災発生時にも継続したことを意味します。前章で述べた情報収集も、普段情報の共有化が図られているサプライヤーの方が、情報収集にも協力的であったそうです。その上、納入再開時の優先度も高く設定してくれたことになります。平常時の関係が震災後に繋がった素晴らしい例です。しかし、普段の活動が、震災時に実を結ばなかった例もあります。