調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 1章(1)-6

大阪のオフィスで働いていた笹賀洋子(仮名)はサプライヤー数社にたいして「被害はありませんか? 社員の皆様は大丈夫ですか?」と簡単なメールを出している。生産状況や納期状況などは聞かない。あくまで安全を気遣った。阪神淡路大震災のとき、他のメーカーからはサプライヤーに対してお見舞いのFAXを出していたのに、自社は何も連絡しなかった。その後「あんたらの会社からは何もなかった」と言われたのだ。「イザというときに、企業姿勢がでるもんやなあ」と。笹賀は、そんな16年前の記憶を思い出していた。

19時00分。東京都内では徒歩で帰宅する人たちが道路に溢れていた。ただし、おそらく後年報じられるほど異常な空気ではなかった。坂口を驚かせたのは、人びとのあまりの普通さだった。坂口が目撃したのは、赤信号を無視するでもなく、むしろ、整然と並び、歩いている人びとの姿だった。人によってはコンビニの床に散乱した商品の収集をわざわざ手伝っている人までいた。レストランで笑いながら食事をしている人すらいた。「もう、こうなったらどうしようもないさ」と笑いながら、居酒屋に流れる人たちまでいた。「電車がないから帰れない。だから、居酒屋で夜を明かす」という。おそらく、どれも現実であるには違いなかった。

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