調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 1章(3)-6

部材調達の困難さの裏側で、東北地方の重要さが浮き彫りになってきた。GDPで10%程度の東北地方には日本を支える産業と工場が密集していた。災害のあとに、同地方への注目が高まったのは皮肉なことだった。ただし、特に福島県では、単に生産復旧すること以外の課題が待ち構えていた。放射能という、まさに目に見えない敵だった。このころバイヤーたちは毎日更新される物流業者からの宅配便状況とにらめっこしている。福島県周辺は放射能の関係で宅配できないことになっていた。福島原発がテレビの画面を覆い、何が起きているのかを全員が注視していた。福島近辺の工場にはもはや誰も近寄ることができなかった。

このころ坂口はかつての同僚(原子力設備関係の設計者)から電話を受けている。あの原発は米国仕様のままだから電源が簡単には復旧しないだろう、という主旨だった。加えて、もう日本が世界に原発を拡販することは難しくなっただろう、とも。

3月25日。自動車各社は工場の生産停止を延長していた。または、在庫があるぶんだけ生産してその後は様子を見る、というのがせいぜいだった。生産復旧したところもあった。ただ、そのいっぽうで、ティア1サプライヤーが順調に生産していると思いきや、仕掛り分を仕上げただけで、材料搬入ができておらず、震災後生産影響が遅れて顕在化してきたバイヤー企業もあった。

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