調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 2章(1)-2
生産をつなぐためには、市中在庫を探すことが一手だ。しかし、カスタム品ばかりの調達では、そもそも市中在庫が存在しない。栃木で勤務していた浜川は、在庫切れを前に焦っていた。樹脂の成形品を調達していた浜川は、もちろん、市中在庫という考えはなかった。したがって、考えるべきはサプライヤー工場の早期復旧だった。しかし、ここで一つ問題が発生する。サプライヤー工場に材料が入らない。材料は会社独自基準にのっとった半カスタム材料だ。完成品在庫がないのは当然として、材料までも在庫切れが間近に迫っていた。浜川はすぐに設計者に連絡を取り、在庫切れまでに代替材テストを行う依頼を行った。テスト状況の共有をお願いしたあとは、設計者のGOサインを待つしかなかった。
食品工場で勤務する秋本が直面したのも、代替品の調達困難だった。安定調達の面では、価格と量の確保は考えていた。しかし、食品という商品の特性上、なかなか代替品をあらかじめ設定しておくこと自体の意味があまりない。一品一味の前提においては、そもそもあらかじめリスクヘッジを考えておくべきか。震災以降、常にこのことを考えさせられることになった。