調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 1章(3)-18
なかなか支援物資が被災地に届かず、食べることすらままならない被災者と、数量の制限がありつつも不安によって購買量が増し、不安解消を行動へ移した首都圏における消費者とが対比され「買い占め問題」が語られています。今回の震災後、被災地への支援物資の到着に時間を要しました。それは、あくまでも輸送手段の問題であって、首都圏の消費者が本来被災地へ向けられるべき供給を横取りしたのではありません。事実、震災発生翌週の新聞報道には、市役所に支援物資が届いているが、輸送手段が確保できずに被災者に届かないといった内容の記事をみることができます。
普段と異なった状況、例えば今回のような震災発生後で被災地の状況がよくわからない場合は、別々の2箇所で起こった事が簡単に結びつけられ、その上で××すべきといった論調が生まれます。これは企業の情報収集の過程でも起こりうる事態です。一刻も早く復旧を目指すためには、ほんとうに因果関係が存在するのかどうかを見極めることは重要です。そして今回、ほんとうに考えなければならないことは、日々の我々の生活に必要な物資も企業の生産活動と同じくサプライチェーンの中に組み込まれていることです。我々がJust In Time的な消費スタイルになっているということです。コンビニエンスストアなどがその欲求に答える典型的な受け皿ですね。Just In Time的ライフスタイルは、震災時にはめっぽう弱いことが今回証明された形です。至る所にあるコンビニにいつもあるはずのモノが無いわけです。買い占めを情緒的に揶揄するよりも、震災発生に強いライフスタイル、消費のスタイルはどうあるべきなのか、そのような形で議論を昇華させない限り、同じような不毛な論調が繰り返されます。直接の被害を受けずとも、調達・購買の直接的な担い手でなくとも、サプライチェーンが寸断されたときを想定し考えることは沢山あるのです。