3章-28:コスト削減
ところで私はかつて自動車産業で働いていました。そのときには、強烈なほどに価格の妥当性を求められたものです。「なぜこの金額なのか」。その際に、相見積書で一番安かったから、などといおうものであれば、矢のような質問が飛んできます。自分なりに妥当性を多面的に確認したかが問われているのです。「会社から調達・購買がお金を預かっているのだから、無駄にすることはできない」という自負にも似た意思です。
そんなことをいうと、つねに返ってくる答えが「ウチは自動車とは違うんです」というものです。これまで何十回は聞きました。面白いのが、こういう会社ほど、「他はどうなっているのか」を知りたがる点です。自信がないのか、単にヒマなのかはわかりません。ただし、そのような会社は、よく「自由な発想」といったものが会社や部門でスローガンになっています。
だからこそ、他業界である自動車の事例を紹介したのですが、無反応でした。つまり「自由な発想」とは、これまでを踏襲のうえで、誰も本気でいっていなかった、というわけです。「だって無理なんだもん」と開き直られるケースが大半ですが、そもそも、「自由な発想」によって既存を変えようとするなら、その、ほとんど無理に近いものに果敢に向かうしかありません。