2章-1:インフラ系調達・購買のコスト分析

上司の遺言

くだらないと思うかもしれませんが、数年前に、ある方からお聞きした話を書きます。

その上司と部下は、調達部門で長く仕事を続けてきた二人でした。その上司が、ご定年で会社を辞することになったときのことです。その上司はそれまで部下にあたり散らしては、嫌われていた人だったようです。ある部下(この話の登場人物です)は、上司の定年にあわせて、不平不満をつらねた手紙を送ってやろう、と画策しました。これまで苦しめやがって、馬鹿野郎、というわけですね。

しかし、部下はその手紙を書いているうちに、どうも不平不満を書けなくなった。去り際にそんなこと書いてどうするんだ、という想いもよぎったのでしょうか。手紙を書けずに、上司の退社日を迎えてしまいました。

すると、逆に、上司が部下の一人ひとりに手紙を渡してくれたそうです。強がる人だったためか、「手紙はあとで読め」と部下に指示したそうです。

上司が去って、その部下は自宅で手紙を開けました。その部下は読んで泣いてしまったそうです。自分が不平不満を書こうとしてしまった反省もあったかもしれません。そこには、こう書かれていたようです(伝聞なので原文ではありません)。

・これまで厳しく指導してきて悪かった

・自分は昔、もっと強い指導を受けてきた。

・そのとき、「こんな上司にはならないぞ」と願ってきたが、自分がそうなってしまった。

・ときには感情に任せたときもあった。申しわけなかった。

・ただ、真剣に君たちを育てようとしたことだけは信じてほしい。

・苦労に苦労を重ねた人と、気楽に仕事を続ける人とでは、人間の質が異なってくる。

・厳しく育てられ自ら生きて行ける人、そして甘やかされて育てられ一人で生きてゆけない人。その教育のどちらが、ほんとうの「やさしさ」だろうか。

・今後も、君たちにうわべの優しさをふりまこうとする人たちがいるだろう。君たちには、ほんとうの「やさしさ」と「まじめさ」を見抜く力をつけてほしい。

・君たちの成功を心から祈っている。

部下がこれを読んだのが、不覚にも残業中だったようで、ついトイレに走ったようです。部下は号泣してしまったんですよね。何もいわずに、自分を見守ってくれるひとがいる。その幸福に気づくことはありません。でも、少しでも気づいたら、自分だけのためではなく、みんなのために優しくできるかもしれません。

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