3-(2)-2 BPO「私の経験」
「調達部門って机を叩いたりして交渉するんでしょ?」
こう友人から尋ねられたことがあります。なるほど、調達部門に対する世の中のイメージはおそらく「脅しとハッタリで買い叩く仕事人」なのでしょう。
私はそのとき明確に否定しませんでした。というのも、あるべき姿から言えば多方面の知識が必要である調達業務もですが、現状では多くのバイヤーがそのイメージどおりだからです。
私はその後に、とある会社の役員の方が「調達・購買部門の人数は今の2割程度でいい。あとの8割は無駄な人員だから、中国にでもアウトソーシングすればいい」と仰っているのを聞いて衝撃を受けました。
バイヤーは自分たちの仕事にそれなりの価値があると思っているのですが、社内から見てもこの程度の評価しか受けていないのですね。
机を叩く交渉をするだけならば、給料が十分の一の外国人を5名ほど雇って、5名で机を叩いて交渉した方がずっといい。これはジョークでしょうか?あながち否定できないように思います。
確かに、バイヤーの業務のほとんどが外注できるのではないかと思えます。未だに注文書を手書きで発行しているところもありますし、納期の催促もFAXです。一見頭を使う業務に見えながら、「脅しとハッタリ」だけの交渉をやっていたりします。
それでは、なぜ日本では調達・購買部門のBPOが進まないのでしょうか?おそらくそこには二つの理由があるように思えます。
① BPO提供のベンダーに調達・購買部門経験者が少ない
② 調達・購買部門が自部門をブラックボックス化している
①に関しては、私は必ずしも調達・購買経験者がいる必要はないと考えています。しかし、現状ではどうしてもシステム傾倒になってしまっているように感じられます。調達・購買業務の現実がよく分かっており、困りごとをバイヤーと共有することができるベンダーが求められています。
それ以上に問題は②です。どうしても、自部門の仕事を守りたいという気持ちが働くためか業務のプロセスがブラックボックス化されています。業務プロセスが不明確なので、一体どこの部分をBPOの対象にしてよいか分からないのです。また、経営層においても、調達・購買業務を効率化し、より高度な戦略構築業務を望まれていないときが多く、手付かずのまま放置されています(経営層が放漫という意味ではなく、重点的に考えていないことが多い、という意味です)。