5-(8)-4 契約・商習慣「雑感」
「契約書なんて役に立たない」と言う人がいます。私はそこまで言い切る度胸も度量もありませんが、確かに真実の一面を表しています。例えば、契約書を履行しないサプライヤーがいるとします。そうだったとしたらどうすればよいでしょう。おそらく答えは、「履行させる」でしょう。どうやって?おそらく厳重注意か抗議によって、です。
それでも守らなかったら?違約金を支払おうともしなかったら?訴訟でもしますか?そこまでやる時間と費用はありますか?訴訟してもよいのですが、もしあなたと取引しているサプライヤーが一斉に契約不履行となったら?
そう考えると、契約締結前は性悪説的に、契約締結後は性善説的に動かねばしかたがありません。だから「契約書なんて役に立たない」と言う人がいるわけです。なるほど。
もちろん、通常は契約不履行ということは起きません。多くの企業は社会責任を負わされていますし、上場企業であればなおさらで、評判も気にします。契約を優位に結んでおいた方が良いに決まっています。
ただ、おそらく「契約書なんて役に立たない」と言う人はそういうことも承知で、あえて言っているのでしょう。
しかし、それでもなお私は契約を重視することを勧めます。契約は「言葉」でできているからです。言葉で約束事を表現する、ということは仕事の基本だと信じるからでもあります。しかも、多くの人は他人を裏切ることはできても、自分の言葉を裏切ることはできません。