1章-31:インフラ系調達・購買の基礎知識

虚無感を脱することはできるのか

この章を、私は、無気力症候群の部員たちを前に悪戦苦闘したエピソードからはじめました。この章では、そこで、調達・購買業務がいかに企業に寄与するかを説明しました。要は自社利益の改善です。そして、企業間取引の健全な維持と向上にも寄与すべきだとお話しました。また法令等の遵守によって、社会全体の透明性向上にも寄与できるのです。

では、こういう話をしたとたんに、部員たちは目を輝かせてくれたのでしょうか。「全員が立ち上がって、調達改革のために奮い立った」と書きたい衝動に駆られます。しかし、現実には、ほとんど反応がなかったように思います。もう、何もできないという無気力が充満しているからです。現実はテレビドラマではありません。何かが一瞬で変えるなんてありえないのです。

どうすればいいか。一人ひとりと、おのれをさらけ出していって本音で話していくしかありません。もちろん協力的なひともいます。また、アタマではわかっていても、業務の多忙さゆえに協力できないひともいます。さらに、理解もできないし、いまのやり方を変えたくないというひとも、やはりいます。だから、その一人ひとりと、徒労に終わるかもしれない、面倒でややこしいことを重ねるしかありません。

たとえば、次のような会話を聞くのは、日常茶飯事です。「課長から、『部長がなんか始めるから人を出せっていうからさ、行ってきてくれよ』って指示があったよ。このクソ忙しい時期に困るよ」「だいたいさ、なんか方針を出したいなら、自分だけで考えてトップダウンでやったほうが早いんじゃね」「だいたい、部長ってそんなにわかってないだろ? 本気でやる気あるのかね?」「それにさ、部門のビジョンって明確じゃないだろ。それで下が動けっていってもバカじゃないの、って話でさ」「まあ、でも、なにもやらないわけにはいかないから、会議に出つつ適当にやっていきますか」

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