4-(2)-3 サプライヤーのコスト構造

<雑感>

あるとき、目の前の営業マンが泣いたことがあります。と言っても、私が怒り狂って泣かせたわけではありません。

それはある大型案件の価格交渉後のことです。大型案件ゆえにかなり目標価格が厳しかったのですが、工程合理化の努力や、大量発注による購入品のコスト低減等々によって、そのサプライヤーは目標価格で合意することになりました。

大型案件がやっと決まり、解放感から飲み会を設けることになったのですが、その席で営業マンは泣いたのです。「ああ、仕事だから何千万円って価格を下げたりしているけど、あの金で俺の家のローンが返済できるのになあ」と。笑ってしまいましたか。いや、笑っても良いと思います。しかし、私はその発言に営業マンの正常さを見ました。

もちろん、会社の金を公私混同することはいけません。ただ、今の私たちは「会社の金」だからといって、かなり精神を麻痺させているのではないか。自分の金ならば、もうちょっと深く真剣に考えるべきところを、ゲームのように扱ってしまってはいないでしょうか。

目の前の百万円を、自分の金のように真剣になれば、きっと結果はもっと変わってくるはずです。もちろん、その営業マンは結果的にこちらの目標通り価格を下げてくれたものの、そのときは断腸の思いだったのでしょう。でなければ、涙は流せません。

もし皆が、会社で起こっていることを、まさに自分のこととして考え行動すれば、ものすごい成果と生産性を上げるはずです。それはスキルやテクニックとか、そういうレベルの話ではありません。私は、日ごろ自分がルーチンに流されているように感じるとき、いつもあのとき見た涙を思い出します。

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