4-(2)-2 サプライヤーのコスト構造

・複雑なティア構造と対応策

さて、その次はティア構造について考察してみます。バイヤー企業がそうであるように、サプライヤーも自社完結で全てを生産できるわけではありません。バイヤー企業が発注をする窓口となるサプライヤーのことを「ティア1サプライヤー」と呼び、その下には「ティア2サプライヤー」、「ティア3サプライヤー」……と呼ばれる孫受け、曾孫受けが下層を構築していることがほとんどです。

  • ティア3サプライヤーが、材料をティア2サプライヤーに供給する
  • ティア2サプライヤーが、その材料を元に部品を作る
  • ティア1サプライヤーが、その部品を元に製品を組み立てる

という構造になっていますから、それぞれの強さ・弱さが同居して、最終的なティア1サプライヤーの価格を特徴付けています。

 

本来は、ティア1サプライヤーがティア2以下の全てのコスト構造を把握していることが理想です。しかし、現実はそうではないこと少なくありません。ティア1サプライヤーが高く買わされていても、その事実に気づいていないことがあります。また、これはティア1サプライヤーがバイヤー企業の子会社の場合によくありがちなのですが、「親会社から必ず注文がくる」という安心感ゆえに、ティア2以降のサプライヤーのコストについて全く無関心であることさえあります。

また、ティア1サプライヤーが、ティア2サプライヤーの見積りをバイヤーに提示して、「こういう見積りなんですよ。だから、この価格以下にすることなんてできません」と開き直ってしまうこともよく見られる風景です。「私たちが高いわけではない。ティア2サプライヤーが高いのだ」と、まるで自分たちが被害者であるかのように言いたいのでしょうか。それが、「ありえないほど」高い価格であっても、その高い価格で買っている現状を改善しようとする意思すら感じられないときもあります。

最後の例は、「責任」というものを小学校教育から学び直していただくほかありませんが、いずれにせよ人的資本等も勝っているバイヤー企業が詳細に入り込んで、ティア1サプライヤーを指導していく必要性があるのです。単に「高い、高い」と言うだけではなく、他サプライヤーのレベルを伝えたり、安価なティア2・3サプライヤーを紹介したり、具体的な弱さを他社との比較を通じて伝えて、改善をお願いしていきます。

 

調達・購買の世界では、プライスからコストへ、という流れが加速してきました。これは、これまでの「見た目の価格(プライス)さえ安ければなんでも良いし、バイヤーは机を叩いてでもサプライヤーの価格を下げさせればそれで十分」という考え方から、「プライスだけではなく、実際かかっている費用・原価(コスト)を管理しなければいけない」という考え方に移り変わってきたということです。

正確なコストを把握しないと、サプライヤーと継続したコスト低減は、結局長続きしない。それは、Win-Winコラボレーションともつながる、調達・購買の一つの潮流なのです。「サプライヤーのコスト構造なんてどうでも良い」なんて言わずに、まずは担当のサプライヤーの強さ・弱さを調べてみて下さい。それが、必ず将来のより強いコスト構造につながっていくはずです。それに、見た目のプライスだけ管理しているなんて、どこか「モノを買う」プロっぽくないじゃないですか。

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