6章4-4<セクション3~情報の収集>

・物価指数の調べ方

ここから、調達・購買業務にも関係のある物価指数についても説明します。5章で為替判断のときに一部を利用した「企業物価指数」です。

 

  • 企業物価指数

この指標は2002年まで卸売物価指数といわれてきました。現在では、消費者物価指数と並んで、代表的な物価を推し量る指標です。消費者物価指数との違いは、企業間(BtoB)で取引される商品の価格がベースデータとなっており、われわれの日々の仕事の結果を表している指標とも言えます。

企業物価指数は、基本分類指数として三つの指数で構成されています。

 

1.国内企業物価指数(CGPl:Corporate Goods Price Index)

国内市場向の国内生産品の企業間における取引価格が調査対象

2.輸出物価指数

日本から積み出される段階の価格が調査対象

3.輸入物価指数

輸入品が日本に入着する段階の価格が調査対象

 

毎月発表されるレポートでは、上記以外にも「参考」として、

・需要段階別・用途別指数

・連鎖方式による国内企業物価指数

・各物価指数の時系列データ

が掲載されます。

 

前述のとおり、為替判断でも使用したものの、その他、この指標はどのように活用すべきでしょうか。

 

(1)価格トレンドの掌握

この指標は、価格の変動を表しています。したがって、コストダウンに際しても、値上げ対応でも、世の中の一般的なトレンドはどうなっているかを知る上では、もっとも適した指標となります。データと、自社の購入価格のトレンドを比較します。ポイントは、同じトレンドに満足しない点です。上昇のトレンドでは、いかに抑制するのか、下落のトレンドでは、いかにしてトレンド以上の下落を購入価格に反映させるか。また、為替レートや原材料価格の変動の影響も、この指標には現れますので、マイナス影響の反映を遅らせる、プラス影響は早く反映させるといった、アラート的な役割も可能です。

 

(2)サプライヤや社内関連部門への調達・購買部門の主張の根拠

サプライヤからの値上げ要求の半分以上は「雰囲気」による便乗値上げの可能性があります。バイヤー企業がサプライヤへ値上げ要求の明確な根拠の提示を求めて、サプライヤからの反応がない、実質的に値上げ要求を取り下げるのは、影響が少なくて、サプライヤ側で吸収できるレベルである証です。

ただ、それでも急激な為替変動や、原材料市況の高騰など、マイナス面の影響も考慮しなければならないケースは存在します。調達・購買部門からサプライヤからの値上げ要求を社内に報告する場合、こういった指標を活用することで、値上げ要求の根拠が明確になります。

そもそも為替や原材料費の購入価格に与える影響は、調達・購買部門のみならず、全社で対応すべき課題です。具体的には、より影響の少ない材料への切り替えを技術的に検討したり、バイヤー企業のお客様への値上げを検討したりといった対処です。しかし、サプライヤからの値上げ要求だけでは、なかなか社内の関連部門を動かすのは難しいですね。そんな場合に、マーケットの傾向を示すには、この指標は格好の材料を提供してくれます。

 

(3)品目ごとの調達戦略の基礎資料

品目によるものの、詳細データの検索では、1980年以降のデータが入手できます。1980年以降といえば、1970年代後半のオイルショックから立ち直り、1985年のプラザ合意による円高進行、バブル景気、そしてバブル崩壊にともなう長期不況、ネットバブル、そしてリーマンショックと、いろいろな企業活動に影響をおよぼす出来事がありました。現在の状況では、1997年に消費税を3%から5%にアップさせたとき、何があったのかは参考になる場合もあります。

重要な購入品であれば、自社にデータが存在する限りの過去にさかのぼって、その時々の価格への根拠を見いだす取り組みも、今の価格決定にとって重要な参考資料となります。

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