6章5-2<セクション4~コラム①「CSRに関連し企業が非難を受けた事件例」>

・人権侵害への非難~事例(2):インドの製品誤使用によるメーカーへの批判

【事件の概要】

  • 1990年代に同社の超音波画像診断装置が、男児誕生が極端に好まれるインドと中国で、胎児の性別判別に利用され、女児の場合は人工中絶が引き起こされるようになった。両国の政府より指摘
  • 男女児の人口バランスが急速に崩れている。この原因が超音波画像診断装置の普及にあり、違法使用に対する十分な防止策を施していないとして、複合企業ゼネラル・エレクトリック(GE)など販売会社が訴えられている
    • インドの慣習
      • 娘の結婚時に多額の持参金が必要とされるヒンドゥー教上の慣習などから、男児の誕生を望む傾向
      • そのせいで男女比の不均衡は広がっており、0~6歳の男児1000人当たりの女児数は、91年の945人から2001年には927人に減少
      • インドでは、94年に出生前の性別検査が法令で禁止
      • 経済の発展に伴い女性の地位が上昇し、不均衡は改善しつつある

この事例は、製品がメーカーの意図とまったく異なる使用方法によって引き起こされました。事件の発生を受け、製品を販売していた企業は、次の様なコメントを発表します。

「自動車が人込みに突っ込んで死者が出ても自動車メーカーが批判されないように、非難されるべきは倫理のない医師で、機材メーカーではない」

まさに正論で反論しました。この反論は「誰がおこなったか」がポイントです。この事件は、現地の「慣習」によって引きおこされました。

この反論をグローバル企業である製造元の幹部がおこなっていたら「価値観の対立」といった問題へと発展し、事態の収拾はかなわなかったかもしれません。この発言は、インドの合弁企業のトップによっておこなわれました。同じ価値観を持つ人間の発言であったために、正論が功を奏しました。

CSR調達が失われる事例では、なかなか正論が通用しないケースが多くなります。これが、企業おける対処を難しくし、対応を遅らせ、事態を悪化させてしまいます。しかし、正論も使い方によっては、正論を活用する選択肢も十分に効果を発揮するようです。

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