5章3-8<セクション2~①グローバル展開に伴う調達部門の役割>
かつて、「なんで日本はデフレなのに、円高になるんだろうなあ」と嘆いていたひとがいました。しかし事実は、デフレだから円高になるのです。
さてそこで実際の物価水準を見てみましょう。ここで注意いただきたいのは、ビッグマックを使って説明した消費者物価ではなく、企業物価指数を使うことです。
そこでPPIという指標を使います(producer price index)。ここではドルを説明しているので、米国関連のサイトを見てみましょう。具体的には“Bureau of Labor Statistics”から入手可能です(http://www.bls.gov/ppi/data.htm)。ほかのサイトでもかまいませんので、PPI~Producer Price Indexを検索してください。
そこで、“Bureau of Labor Statistics”の”Top Picks”へ(http://data.bls.gov/cgi-bin/surveymost?pc)移動してもらって “Total manufacturing industries”を選択してください。
これでアメリカの物価関連はダウンロードできるはずです。1980年代はさほど物価に変化はありませんが、2014年までを俯瞰してみると約2倍に変化しているとわかりますよね。
次に日本の物価はどうやって検索すれば良いのでしょうか。日本銀行のサイトが活用できます。
日本銀行時系列統計データより(https://www.stat-search.boj.or.jp/#)、「主要時系列統計データ表」のところから「月次」を選択してください。そして、「企業物価指数[国内企業物価指数] 総平均」を見てみましょう。これが求めていたものです。あわせて、実際の為替レートの推移を一緒にデータ取りしましょう。為替レートについては「為替相場(東京インターバンク相場)」を選択してください。
最後に、三つのデータ「米国企業物価推移」「日本企業物価推移」「為替レート」が揃いましたから、ここまでくれば、企業物価指数から計算した(購買力平価から見た)為替レートと比較ができます。
ここでは1986年を起点としました。1985年にプラザ合意がありましたから、そのあとの変動為替相場(正確な表現ではありませんが、わかりやすく説明するために、このような書き方をしています)を反映するために1986年が起点です。
この1986年の1月時点での実際の為替レートは1ドル=192.65円のようですね。ということは、わかりやすく仮定すれば、日本と米国で同じ商品が、1ドルと192.65円で売られていたということです。それならば、
- アメリカ:1ドル
- 日本:65円
したがって→192.65÷1=192.65
計算できますから、たとえば20年後に
- アメリカ:1ドル→これが2倍になっていたとすれば、2ドル
- 日本:65円→これが変わらないとすれば、192.65円のまま
したがって→192.65÷2=96.325
となり、1ドル96.325円になるはずですね。だから、実際の企業物価指数を使ってみましょう。さらにグラフ化したのがこれです。
いかがでしょうか。「パソコンと無料のデータを使っただけなのに、中長期的には為替を予想できているじゃないか」と思っていただけるでしょうか。
もちろん、時期を一つだけとらえれば、実際の為替レートと、(購買力平価から見た)為替レートはズレが生じています。しかし、中長期的には、けっこう収束するとわかります。
ということで、みなさんは、公的なデータから為替を予想するという必殺技を身につけました。他国に応用したらどうなるでしょうか。日本の物価データはありますから、あとは、その国のPPI(producer price index)を探していただければ良いことになります。
ぜひ一度、海外調達やグローバル調達のプロになるためにも、Excelなどで計算してみてください。