5章3-7<セクション2~①グローバル展開に伴う調達部門の役割>

・為替の見極め

そして調達部門としては、今後の為替の見極めをせねばなりません。為替がどう変動するかで、大きな意味で調達戦略に影響を及ぼします。ところで、その為替レートなるものは当てられるのでしょうか。

まず結論からすると、当てられません。為替レートを予想できるひとがいたとしたら、為替取引で大金持ちになっているはずで、企業で勤めていないでしょう。現実的に目指すべきは、「100点ではないけれど、70点くらいで良いので、だいたいの推移を予想できる」ことです。

  • 輸入や逆に現地生産を決定する際にも、為替の理解は必要
  • しかし調達・購買部員は為替ディーラーではないので、深い知識ではなく、実務的な「使える」為替の知識があればいい
  • 「為替の基本的な考え方」から「実際の中長期為替予想」を理解する

上記を念頭に説明を開始します。

まず、為替予想については、スパンによって内容が異なります。短期的な予想(デイトレードなど)は難しいものの、中長期的には「購買力平価」なる考え方が使えます。

この購買力平価について、「企業物価指数」と「実勢為替レート」を使います。なお、購買力平価は難しく考えないでください。いや、実際は難しいものの、わたしたちは実務家ですから、簡易的に説明します。これは、いわば、各国の物価が存在するときに、いくらで為替レートが存在すれば均衡するかを考えるものです。こういう例を考えてみましょう。

この例では(あくまで例です)、ビッグマックがアメリカでは3ドル、日本では300円で販売されているとします。実際の価格とは異なります。あくまで例でとらえてください。そうすると、このビッグマックがまったく同じであれば、300÷3=100、つまり1ドル=100円が最適なレートとなります。

そのレートで交換されれば、均衡するはずで、誰もソンやトクはしません。正確な表現ではないのですが、このレートよりも安かったり高かったりしたら、裁定取引が可能となります。裁定取引とは、これまたわかりやすくいえば、ある市場の商品をもってきて、違う市場で高く販売することです。だから、為替レートは、このケースでは、1ドル=100円となります。

有名な指標は、「ビッグマック指数」「トール・ラテ指数(スターバックス指数)」で、「コカコーラ指数」や、「iPod指数」なども存在します。

ただ考えてほしいのは、次のようなケースです。

このビッグマックが、アメリカで5ドルになったとします。アメリカの経済が好調で、全体的な価格感が上昇してきたのですね。インフレによって価格が相当なアップだった、と。そのときに、日本の価格が変化しなかったとします。そうすると、300÷5=60、ですから、1ドル=60円が最適な為替レートとなります。

これを噛み締めてほしいと思います。

なんとなく感覚と違う気がするかもしれません。アメリカ経済が好調でインフレ、日本は横ばいなのに、円が買われ円”高”になるというのです。つまり円の価値が高い状況になるのです。繰り返しますが、これを噛み締めてほしいと思います。

  • ケース①アメリカのビッグマックが高くなる→円高になる
  • ケース②アメリカのビッグマックが安くなる→円安になる

*これらはどちらとも、「通貨」「モノ」の価値が逆転することに起因します。というのは、こう考えてください。

  • アメリカ:物価が上がる、とすれば相対的にお金の価値が下がる
  • 日本:物価が下がる、とすれば相対的にお金の価値が上がる

ということなので、お金どうしを比較します。アメリカではドルの価値が下がり、日本ではお金の価値が上がっています。だから、通貨間では、日本の円が買われ、結果、円高になるのです。

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