4-(6)-4 品質の管理「雑感」

不景気のとき大多数の企業は工場の人員を極限まで減らし、生産量に応じて臨時社員でまかなう構造を取りました。そのとき工場の人員を減らさなかった企業は大変でした。「最近、受注する数が少ないでしょう。だから最近は早めに工程をストップして、皆で自己啓発運動をやっているんです」と笑いながら悲しい状況を教えてくれる営業マンもいました。「最近、工場でやることなくてねぇ。だけど工場の奴らを帰らせるわけにもいかないでしょう。だから、工場のペンキ塗りとかをやらせているんですよ。」と教えてくれたかと思えば、「もう塗る壁もなくなりました」とも。

しかし、そのサプライヤーは現在、他のサプライヤーを引き離して抜群の品質と納期対応力を誇っています。技能の伝承がしっかりと行われており、工場としての一体感も持っているからです。

「社員数を減らさないよう、必死で頑張ってきたんです。だから今では、他の企業と違って、しっかりとした生産体制が出来上がっています」と語る営業マンの顔が明るかったことを覚えています。

私は不景気時に社員を減らしたサプライヤーを批判する気など全くありません。それは、やむを得ないことだったかもしれません。減らさざるべきだったか、減らすべきだったか。私は答えを持ち合わせていません。

品質の安定と向上には作業者間の技術の伝承は不可欠です。同時に工場の作業者を減らさなければ企業自体の存続が危ぶまれたサプライヤーがいるのも事実です。私はこのことを考えるたびに複雑な思いにとらわれます。

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