6-(1)-3 戦略をいかに立てるか「戦略の構築のために」
戦略を構築するためには、まずその戦略の目標を部門で共有します。その後、自社の調達分野を購入高や技術の先進性によって4つの分類を行います。自社製品で分類するか、あるいは部品軸か。この分類は企業によって異なってくるでしょう。
①特命購買方式・・・購入数や購入金額が大きく、特定のサプライヤーからしか調達できない領域です。この場合は、特命購買方式を採用します。早い話、見積り依頼先を1社に絞り込んで、そのサプライヤーと戦略的な関係を構築します。仕様の作り込みや、原価企画、品質の熟成などを早期から合同で実施します。特定のサプライヤーしかできない仕様なのに、無理に競合を実施しようとするバイヤーがいますが、それは無理というものです。競合他社は当て馬として使われるだけの結果になります。それよりも、両社で高いコスト目標を共有し、それに向かって協同していく方が得策です。
②徹底競合・・・バイヤーが最もやりやすい領域です。購入数・購入金額が大きく、しかも複数のサプライヤーからも購入できる領域では、相見積りにより徹底競合を実施します。ここでは、サプライヤー間の品質・技術力が同等であることが前提のため、事前のチェックが欠かせません。
③取引関係重視・・・取引額は大きくないものの、特定のサプライヤーからしか調達できない領域です。ここではサプライヤーとの取引関係を重視します。例えば、少量生産の製品や、ライフサイクル末期の製品に使うものが想定できます。標準部品で代替できない場合がほとんどでしょうから、ドラスティックな調達構造変化を目論むと、急遽生産を中止されたり値上げを申請されたりします。バイヤーがサプライヤーに対して弱い領域であり、安定調達を第一とします。
④都度最適選定・・・どこからでも調達でき、購入数・購入金額も大きくない領域です。ここでは、力を入れても実りは少ないため、都度最適なサプライヤーから調達します。例えば、早期調達が可能なサプライヤーや、その時点で最安値のサプライヤーなど。その都度最も求められている内容に対して適合したサプライヤーを効率的に選択してゆきます。
こう分類してゆくと、全ての領域を一括して戦略を構築することができないということが分かります。戦略とは、全てにまんべんなく力を入れるものではなく、目的達成のためにより力を入れるところと、確信犯的に力を抜くところを決めることでもあるからです。
そして、この分類のあとに各サプライヤーのシェアがざっと計算できることになります。競合体制を構築できる領域が少なく、いくつかのサプライヤーの寡占になってしまうことが分かれば、新規サプライヤーを探すことになるでしょう。サプライヤーの数が多すぎて、管理ばかりに手を取られているのであれば、サプライヤーの数を減らすことにもなるでしょう。
そのようにいくつかをシミュレーションし、サプライヤーを並び替えたりして、その時点での最適案を模索します。重要なのは、繰り返しですが「どの場合に戦略の目標に最も近づくのか」ということです。コストを低減することが目的であれば、そのサプライヤー配置にしたときに果たしてコストは下がっているのか。違う配置の方がより下がりはしないか。それは現実的か。などなど。多面的に考えてゆきます。さらには上手くいかなかったときの代替案もいくつか考えます。
このように考え、いくつかの評価を受けてゆくと調達・購買部門としての戦略ができあがります。そうすれば、現実的で目的のはっきりしたものとなっているはずです。
ここまでくれば、社内の関係部署にも自信を持って説明できるはずです。社内を説得し、納得してもらい、全社一丸となった活動が実施できるはずです。
多くの場合、企業の中で同一領域を担当しているバイヤーは一人しかいません。その一人が「なぜあなたはその部品を、そのサプライヤーから、その方法で調達しているのか」という質問に答えることができなければ情けないことです。各設計者はその領域の一部には関わるでしょうが、領域全体を見渡すことができるのはバイヤーしかいません。
確信を持って、自分の担当領域の戦略を語れるようになって下さい。