5章3-6<セクション2~①グローバル展開に伴う調達部門の役割>

・海外新規サプライヤ開拓と環境整備

そして品質条件を決定した前提で、次に実務的に重要な海外新規サプライヤ開拓について説明していきます。調達・購買部門では、海外企業からの安定的な調達が必須です。

過去の円高局面では、中国や東南アジア諸国から調達する企業が増えました。しかし「安かろう、悪かろう」の言葉にあるとおり、未熟な技術レベル、不十分な品質レベルのサプライヤも多く、結果的に日本国内から購入するのと比較して、総コスト評価ではかえって高くなった例もありました。

しかし、いうまでもなく、新興国の経済発展により、海外企業の技術・品質レベルとも急速に向上しています。近年では、日本企業の技術的・品質的な要求に十分対応できる新興国のサプライヤも多数登場しています。重要なのは「新興国だから」といった大きな「くくり」で判断するのでなく、サプライヤを一社毎、定められたプロセスに従ってクールに確認することです。そして、その内容に基づいて戦略をもとに調達を決定します。

 

(1)現地スタッフとの連携

もちろん、品質面での問題が起こる可能性は、相対的に海外サプライヤが高いでしょう。そこで重要となるのが、現地スタッフとの連携です。調達部員が存在しなくても、生産管理部門が実質的には調達業務を遂行している場合は、生産管理部員でもかまいません。それにグローバル化が進めば、遅かれ早かれ、海外にも調達・購買部門を持つはずです。

企業はグローバルに展開していてもいなくても、同じ屋号の下にいる社員たちは、企業理念に共鳴して集まっているはずです。ということは、言語や肌の色が違えども、おなじ目標へ向かって進んでいます。すくなくとも、そうでなければなりません。

グローバル化においては、そのような海外の人々との協力が重要です。難しいことではありません。自身の海外拠点工場でアクセスできるひとを探しましょう。メールでもかまわないので、協力をあおぐことです。そして、サプライヤ情報などを交換しましょう。

日本でサプライヤを調べても限界があります。しかし、いっぽうで、現地ではすでにサプライヤとつきあいがあるのです。その情報を吸い上げないともったいない。著者の経験でも、現地スタッフとの密な連携は、彼らが日本にやってきたときなどに日本サプライヤを案内するなど、人的交流にもつながります。

 

 

(2)多言語に対応できる環境整備

さきほど現地スタッフとの連携をあげました。グローバル化への対応で、日本企業が一番苦労するのは「言葉」の問題です。業務を進める上で、海外の拠点やサプライヤと、日本の拠点が相乗効果を生み出すためにも、言語の壁を乗り越えなければなりません。そのためには、グローバル言語である英語でのコミュニケーションの実現は必須です。

これは、日常業務の中で、話す、聞く、書くといった基本的なレベルに留まりません。業務プロセスを定義する文書を、英文化、できれば進出先の言語へと翻訳して、できるだけ同じプロセスで業務を進める環境整備が必要です。

業務プロセスとは、国によって異なる文化的な背景を色濃く反映するものです。グローバル化への対応としては、文化的背景を原因とする問題を乗り越え、双方の違いをお互いで認識した上で、円滑な業務を進める方法が極めて重要です。

多くの日本企業は、日本国内で日本人だけで業務を進める仕組みを持っています。海外に進出したとしても、現地に派遣された人が数人いるだけで、国内業務にはなんら変化が起こってないのでは、進出の本当の効果を勝ち取れません。海外進出とは、日本側で全社的に取り組んで初めて成功するものなのです。

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