7章4-3<セクション3~社内関連部門とのコラボレーション>

2.購入要求部門との連携~(1)「仕様決定」

購入要求部門とは、メーカーであれば開発・設計部門です。間接材となると、社内のあらゆる部門になります。

調達・購買部門では、具体的に購入するもの、あるいはサービスの内容を決めることはできません。何を買うかは、購入を要求している部門が決定します。

買いたいものを決める場合、特別に困っていなければ、調達・購買部門へ連絡することはありません。購入要求部門みずから、サプライヤから資料を取り寄せたり、営業パーソンを呼んで、直接打ち合わせをおこなったりします。結果、購入要求部門とサプライヤの直接のやり取りで、購入するものの仕様が決まってしまいます。

一般的に、仕様が決まると購入コストの80%は決まるといわれています。企業で購入する場合に、ほんらい要求部門でおこなうべきは、仕様の決定です。サプライヤの力を借りて仕様を決定するのは、上手な外部のリソース活用方法の一つです。しかしサプライヤの力を借りて仕様決定をおこなった場合、そこが現実的に発注するサプライヤになります。

ポイントは、仕様決定プロセスと、サプライヤ決定の分離です。発注するサプライヤを決定する前の段階で、仕様決定のプロセスへサプライヤが協力し、有利な発注条件をあらかじめ購入仕様へ盛り込む活動は「スペックイン」と呼ばれています。

著者が経験した産業機械の営業では、顧客の要求仕様を検討する段階に食い込み、スペックインを実現する営業活動をおこなっていました。あとで価格競争に巻き込まれ、受注価格が下がることを避けるため、スペックで縛るのです。

このような営業的な取り組みを、調達・購買部門として、見過ごせない理由があります。営業がなぜスペックインするためにあらゆる努力を惜しまずにおこなうのか。これは競合を避けるためです。競争相手の存在によって、価格を下げる効果も生まれます。

購入価格の削減は、調達・購買部門にとって重要な課題です。スペックインを購入側から見るとき、購入仕様の決定の過程で、より購入側ニーズをくみ取った最適な仕様となる可能性がある反面、価格面では高くなってしまう可能性が高いといえます。

スペックインといった具体的な活動でなくても、サプライヤ営業パーソンの本心としては、できるだけ調達・購買部門には登場して欲しくない、できることなら注文書が送られてくるだけの関係がよいとさえ考えています。

だから、仕様を決定するプロセスには綿密なフォローをおこなって、仕様を決めるプロセスで、事実上サプライヤの選定も購入要求部門でおこなわれるように仕向けるわけです。はたして、調達・購買部門としてどのように対応すればよいのでしょう。

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