7章4-2<セクション3~社内関連部門とのコラボレーション>

1.経理・財務部門との連携~「予実管理」

予実管理とは、「予算」と「実績」を対比させ、その分析や改善の計画、今後の意志決定までを導くものです。企業によっては「予算管理」といわれています。

調達・購買部門にもっとも関係の深い予実管理はコストダウンに関する指標です。削減の効果計算には、コストダウンをする前の基準となる購入金額が必要です。購入予定であった金額を予算として、その金額レベルで経理・財務部門が認識しているかがポイントです。

*なお、ここでは経理・財務部門が予算管理も担う企業を想定してお話しします。ただ、企業によって異なりますから、広く予算管理をおこなう機能と調達・購買部門の連携と考えてください。

ここで重要な点は、自社が予算を決定する仕組みを理解することです。仕組みを理解して、その仕組みに沿って、購入予定額を認識し、コストダウンへのスタート点とします。そして、調達・購買部門として、独善的な予算設定をしてはなりません。サプライヤから入手した見積金額対比で、交渉の結果で見積金額よりも低い金額での購入が実現できたとしましょう。

例:過去に実績のない部品を買わなければなりません。仕様書と図面を元に見積依頼書を作成して、サプライヤに見積依頼をおこない、見積書を入手しました。見積金額に対して、供給範囲と価格の確認をおこないました。結果、見積金額は、上図の通りとなりました。

さて、ここでの当初見積金額と、仕様確認後の見積金額の100円の差額は、コストダウンでしょうか。「当初」と「仕様確認後」との間に、どのような調達担当者としての取り組みがあったのかも、もちろん重要です。しかし、コストダウンとして業績への貢献をするのであれば、「当初」を予算として経理・財務部門が認識していたかどうかで決まります。

基準となる「予算」は、前会計年度の購入実績であったり、受注可否の判断となった受注時の想定コストであったりと、企業の事業内容によってまちまちです。一つ確実に言えることは、実際に購入段階には、ほぼ予算は決まっていることです。

近年の調達・購買部門では、開発購買といった形で、購入検討の初期段階からの取り組みがおこなわれています。これは要求部門、製造業では開発・設計部門との共同した業務を想定しています。同時に経理・財務部門へも、予算の確認という形で、早期段階でのアプローチが必要です。

もう一つ、予実管理との観点で、経理・財務部門へのアプローチが必要となるケースがあります。それは、会計年度の期末が押し迫った段階での、購入予算の順守です。例えば、3月末に年度末決算の企業を想定します。3月末までに当該会計期の購入処理をすべて完了すれば良いのでなく、調達・購買部門として、事前に見通しを提示しなければならないはずです。

経理・財務部門に一度提示した購入見通し金額は、見通しと同じ、もしくは近似の金額で購入しなければなりません。調達・購買部門の責任に拠らずに、購入金額が変わるケースもあるでしょう。そのような事態に陥らないために、サプライヤの見積金額について、社内関連部門を含めた情報収集をおこない、購入金額の変動の掌握が必要です。

株式を公開している企業では、決算の見通しを発表しています。調達・購買部門による購入費用の見通しも、株主の投資判断に影響する決算見通しのベースになるデータです。予定はあくまでも予定と開き直るのでなく、見通し数値と実績に差異が発生した場合には、その原因を調査して、理由と共に報告しなければなりません。そのような取り組みが、信頼関係のベースとなります。

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