5章6-2<セクション5~コラム「生産回帰しているのか」>
2.「生産回帰」状況分析
そこで、複数の観点から、生産回帰の状況を調べてみます。
2-一人:雇用/失業状況、海外長期滞在邦人数の推移・日系企業数の推移
上グラフは、日本国内の失業者数(棒グラフ、右軸)と、雇用者数(折れ線グラフ、左軸)をグラフで表しています。リーマンショック後の2009年央まで増加を続けた失業者は、以降減少傾向を継続し、現在失業率は3%台です。
日本で完全雇用状態と言われた高度成長~バブル経済(1990年代初め)までの期間、失業率は2%台で推移していました。雇用は回復傾向を続けているといえます。
人口減少社会である日本では、雇用環境の改善は喜ばしいことでしょう。それに人手不足の解消も企業にとって大きなテーマです。そこでさらに違った角度から確認してみます。
上記グラフは、海外に長期滞在する日本人数の推移です。平成元年以降、海外に長期滞在する日本人の数は、一貫して増加しています。
上記の棒グラフは、日系企業の海外の拠点数の推移です。英国や、台湾など減少に転じている国もありますが、それ以外の国では、引き続き拠点数の維持、あるいは増加傾向が読み取れます。
ということで、国内の雇用は改善しているものの、それは、海外の拠点を閉めて、日本へ回帰している、というわけではなさそうです。生産回帰とは間接的な関係ではあるものの、人の観点からは生産回帰の傾向は読み解けませんでした。