6章3-3<セクション2~CSR調達の実践>
・CSR調達の実現ステップ
それでは、そのCSR調達をどのように実現するのか。さらに3点をあげます。
(1) これまでの取り組み状況の確認
2000年代に入って、企業内にCSR対応をおこなう部門の設立が相次ぎました。上場企業であれば、これまでになんらかの取り組みをおこなっているはずです。したがってCSR調達の実現に際しては、今後の取り組みのポイント掌握や、漏れている内容=リスクを特定するために、これまでの取り組み状況を掌握します。具体的には次の内容を確認します。
① 従来の調達・購買管理で行なわれている内容
1) 購入物の品質と安全性は具体的な内容で、正しい手順で確保されているか
2) 損害賠償責任につながる法令違反はないか
② 既存の企業運営管理で管理されている内容
1) 適正な労働環境の下で購入品が生産されているか
2) 環境への配慮が適正に行なわれているか
その他、チェックポイントとしては次の通りです。もちろん、従来の仕組みや合意事項を生かしつつ、不足部分に手を加え構築を進めます。
- 自社に適用される法令の内容と動向を理解し遵守している
法人に適用される法令:会社法、民法、刑法、労働法
企業や業界によって適用される法令:下請法、他
地域によって適用される法令:条例 - 法令違反しない社内教育や、遵守状況の定期的なチェックをおこなっている
教育機会の提供(社内/社外)
サプライヤを訪問して確認できる法令遵守内容(従業員/労働環境) - 人権侵害やハラスメントの通報・相談ができる体制にある
相談窓口の設定
サプライヤ訪問(監査)時の確認 - 環境(地球温暖化、汚染物質、自然環境)に配慮する具体的な取り組みをおこなっている
ISO14000取得状況
各業界におけるグリーン調達やゼロエミッションの取り組み - 製品、商品、サービスの安全性が最優先事項と社内で認知されている
従業員の日常的な姿勢と、唱えられた「異」に立ち止まる風土 - 公開すべき情報と、守秘すべき情報が区別して管理されている
情報管理規定の整備状況と、危機管理体制の整備 - 地域との共存を意識した貢献をおこなっている
従業員の直接的貢献:近隣の清掃
企業として組織敵貢献:地域組織と連携して活動
金品提供による貢献:寄付 - 公職(公務員、政治家)との接触は、関連法規を理解した上でおこなっている
公務員:国家公務員倫理法(同規定)、刑法(贈収賄罪)、不正競争防止法
政治家:政治資金規正法、公職選挙法、不正競争防止法 - 反社会的勢力との従業員の個人的、組織的な接触はない
企業倫理規定への盛り込み
外部機関への相談とサポート
もし、全社的なCSR推進部門が存在すれば、CSR調達実践に必要な役割分担を明確にして、調達・購買部門の役割の明確化をおこないます。調達・購買部門のCSR推進上の役割とは、サプライヤ対応です。従来の仕組みを活用して、必要最小限のプラス部分を見極めます。