5章6-1<セクション5~コラム「生産回帰しているのか」>

・生産回帰とその実態

最近、新聞やマスコミの報道で「生産回帰」を伝える記事や特集を目にする機会が増えました。かつて、円高によって高くなってしまった日本の労務費により、企業はこぞって海外へと事業の場を広げていきました。2011年以降の円高局面でも、海外への直接投資が大きく伸びました。そんな中での円安局面。

大きなメリットがある一方で、円安によるデメリットも顕在化してきました。原油価格は市場価格の下落によって、一時と比較すれば安くなっています。市況の高止まりが継続していれば、ガソリンや灯油の小売価格の高騰にもっと苦しんでいたでしょう。そして、海外での生産が今、国内に回帰しつつあるとマスコミは報じています。

基本的に、生産回帰は歓迎すべき事象です。しかし、マスコミの報じる内容とは別に、日々の仕事を通じて生産回帰は実感できません。果たして、この報道と実感の違いはなぜ生まれているのかひもといてゆきます。

 

1.「生産回帰」の定義

最初に「生産回帰」を「海外に移した生産リソースを日本国内に戻し、再び生産すること」と定義します。

逆に、かつて日本企業が海外に工場や拠点を移した理由は、次のようなものです。

  • 労務費(円高)
  • コスト(調達・輸送)
  • 市場拡大(事業拡大)
  • 戦略的進出(地産地消)
  • 顧客ニーズ(系列)

ということは、生産回帰がほんとうだとすれば、これらのメリットがなくなったか、少なくなった、または、メリットはいまだにあるものの、日本に戻すメリットのほうが大きかったことが確認できるはずです。そしてその逆進性はほんとうに生じているのでしょうか。そして、はたして現在「生産回帰」がほんとうに発生しているのかどうか、確認を進めます。

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい