2章-5-2<セクション4~③いかに効率的にモノを運ぶか>

・多様化する物流の費用をいかに抑えるか

そこで、物流において高コストになりがちな例を使い、それらケースでいかに物流コストを低減できるかを考えてみましょう。

(1)短納期化

(2)多頻度化

(3)小口化

しかし、そもそも物流コストが意識されていない場合も多々あります。そこで、物流コストとは、いったいどのようなに発生し、低減できるのか。ここで、製造業における典型的な二つのケースを想定して考えてみましょう。

 

【Case 1 まったく表に出てこない物流コスト 】

取引基本契約であらかじめサプライヤとの引き渡し条件が規定されている場合です。見積依頼にあえて明記はしませんが、あらかじめきめられた引き渡し条件を前提にしています。多くの場合、サプライヤからの価格提示は、物流費込みの価格が提示されます。普段調達担当者は物流費に頭を悩ませる必要はありません。物流に必要な条件が明確に定義されているためです。また、発注に関しては、フォーキャスト(発注予定数量)を3ヶ月前から継続にサプライヤへ提示し、納入一週間前に確定発注をおこなっています。調達担当者は、物流コストよりも、購入する材のコストと納期に集中しています。

 

【Case 2 手を変え、品を変え登場する物流コスト 】

取引基本契約を締結していないサプライヤが多い場合、また取引基本契約に明確なサプライヤとの引き渡し条件が明記されていない場合がこのケースに該当します。この場合、物流費用の価格への反映方法は千差万別です。見積価格に含まれるケースもあれば、購入する材の価格とは別に物流費を提示される場合もあります。そして、よほどの重量物か、かさばるものでなり限り、提示される物流費は数百円~数千円です。購入する材の価格には敏感でも、輸送費について言及することはありません。言及するほどではない、妥当性をにおわせる金額であるがゆえです。

 

上記の2ケースは、いずれも実在する製造業を例にしています。さて、両者の共通点とはなんでしょう。実在する上記二つの例の企業規模は、資本金だけの比較では2000倍にもなります。まったく異なる両社ですが、大きな共通点があります。

  • 一方は、詳細まで規定して、もう一方は、あまりにも規定がなくて、双方の調達担当者が物流費に無関心であること

当たり前すぎて気づかないかもしれません。一方では調達担当者があえて気にする必要がないくらいに確固たる条件があって、もう一方は千差万別過ぎて、また提示される物流費がなんとなく「妥当」であるがゆえに無関心となってしまっています。

ふたたび前述のキーワードが登場します。

(1)短納期化

(2)多頻度化

(3)小口化

上記の二つのケースはいずれも、(2)多頻度化で、発注量にもよりますが(3)小口化にも該当します。Case1では納入一週間前の確定発注をおこなっています。それまではあくまでも発注予定の連絡でしかありません。よくあるケースでは、確定発注前に連絡した数量にたいして±10%の数量変動については追従するようにサプライヤに課しています。確定から納入まで最短で一週間ということで(1)の短納期化にも該当します。

発注規模の大小には関係なく、それでも物流のトレンドをとらえている両社。表に出ようが、姿を隠そうが、確実に物流費は払っています。これら三つのキーワードは、発生費用の面から見ればどれも好ましくない条件です。

本来であれば、(1)短納期化(2)多頻度化(3)小口化によってプラスで発生する費用と、マイナスされる他の費用の両方をチェックしなければ、物流費の妥当性は判断できません。

モノを購入する際に必ず必要な物流費用。上記の二つのケースで起こっている無関心で、一見効率的な業務をおこなっているように見えて実際一番ラクをしているのは調達担当者です。ほんらいは、物流費の適切性を掌握すべきです。

サプライヤの物流量の規模によって、発生費用には大きな差が生まれます。またバイヤー企業側の発注量にもよります。毎回の納入が決まったサイズのトラックに最適な量であれば調達担当者側からのアクションでミニマイズ化が可能です。まずは、自社の発注頻度によって、(1)短納期化(2)多頻度化(3)小口化、が生じていないか。生じているとすれば、どれくらいのコスト的なマイナスが生じているか。これを確認するのが第一歩です。

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