2章-5-3<セクション4~③いかに効率的にモノを運ぶか>

・物流コストの最適化を目指して

そこで次に、物流コスト最適化について説明します。ここで、やや遠回りするようですが、「ロジレス化」から話を開始させてください。

多くの企業では、納入場所を自社に指定し、輸送はサプライヤにまかせています。しかし、物流は進化しており、ここ最近に限っても、イノベーティブな取り組みが次のように大きく報道されています。

  • ヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングスは中小企業の効率化を後押しする物流アウトソーシングを開始
  • 佐川急便は大型の商業施設向けに、商品の仕入れ業務を一括で請け負うサービスを始めた
  • 日立物流は、仏食品大手企業と、日本国内食品企業をつなぎ、物流施設の共同利用を促進

上記の報道は、物流業務を企業内から切り出す「ロジレス化」の流れによるものです。製造を外部委託するフェブレス化と同様に、経営効率化の手法として定着し、企業の利益率を高めるとして今、注目されています。アメリカでは、フェデックスに代表される物流大手が割安で効率的な配送網を企業に提供しています。

「ロジレス化」とは、上図の通り企業内の構内物流の一部を含め、外部の専門業者へ委託を意味します。調達・購買部門では、業務処理上の効率を追求するため、どのサプライヤからの購入品も、引き渡し場所は自社の工場1箇所に集約しています。複数のサプライヤを競合させる場合、フェアーな競争を実現するためにも、同じ条件の下で価格競争することが必要です。しかし、サプライヤの所在地が異なれば、当然輸送費も違ってきます。

近隣地域からサプライヤの自社トラックで納入をおこなう場合は、輸送費としての積算は行っていない場合もあります。しかし、購入対象のサプライヤが、日本国内のみならず海外にも広がっています。バイヤー企業が要求する納入頻度も小口化する傾向にあることから、輸送費の割合は増加する可能性も高くなり、物流管理の重要性も高くなっているのです。

物流大手の提供する「ロジレス化」にともなうサービスでは、従来であれば企業内の構内物流として使われていた業務も取り込みも可能になっています。

サプライヤからの納入と異なり、自社から顧客への納入は、自ら物流業者の選定を行います。実際、輸送や倉庫保管に関係する物流業者を調達・購買部門で管理するケースが多くなります。物流業者選定のノウハウは、調達・購買部門内にあるのです。物流業者の選定は、輸送や倉庫保管、物流時の梱包作業といった付加価値を含めて検討します。

自社から輸送先への「輸送」は、選定した物流業者によって提供されるサービスに違いが生まれにくい業種です。したがって、競合による価格メリットが最大化しやすい、数少ない外部リソースといえます。その部分に、従来であれば社内部門で担っていた業務を加え、通常サプライヤと同様に、競合方法や、サプライヤリレーションの構築方法といった購買の手法・ノウハウを活用し、最適なロジレス化を進めます。

しかし、これがなぜ物流コスト最適化につながるのでしょうか。

自社に物流部門がある場合、サプライヤの見積金額に含まれる物流費用を分析できるのです。いわばサプライヤが運ぶ=他社行為であったものを、自社が運ぶ=自社行為に置き換えることで、情報の非対称性を排除し、それをサプライヤ物流コストの最適化に活用していきます。

もっと直接的にいえば、「自社商品を運んだときいくらだった」とわかれば、「サプライヤから運んでもらうときにいくらくらいになるはずだ」とわかるわけです。

くわえて、物流コストの査定の“練習”にもなります。たとえば、車で数十分の距離まで運ぶ物流業者と、輸送時間が10時間の物流業者の見積提示金額が同額とします。ただ、そのような場合は、高額な物流業者側は、物量などの条件が不利な場合がほとんどです。そこで、物流条件をバイヤー企業も一緒になって検討し、最適な方法を選ぶことで、最終的には遠方の物流業者の方が安価になる可能性もあります。

また近隣の距離を運んでいただく物流業者にたいしては、距離が近い分、遠方の物流業者と比較して安価でなければならないともいえます。この場合は、近隣の物流業者同士で比較することで、妥当性のあるコストを模索します。難しいことではなく、物量と距離の関係をデータ収集するだけでも、じゅうぶんなコストダウンネタになります。

こういった取り組みは、先に述べた「ロジレス化」にも活用できます。従来との比較でメリットが無ければ「ロジレス化」を推し進める意義がありません。新しい手法を取り入れる場合、メリットがなければ、実現化しません。物流業者の選定の際に発生費用の妥当性を見極めるとともに、その査定データを、つぎにサプライヤ側の査定にも使う“たくましさ”が必要なのです。

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